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ドキュメンタリーは詰まらない!その理由を考えた=お金、時間、労力。本当に報われない仕事? [編集作業]

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ドキュメンタリーは詰まらない!その理由を考えた=お金、時間、労力。本当に報われない仕事?

答えはシンプル。まず、ドキュメンタリーを作る人たち、あるいは会社は真面目だということ。同じ映像の分野だが、テレビや劇映画とはかなり違う。NHK報道に近い感覚。教師的なスタンスと言ってもいいかもしれない。

というのも、制作目的が「教育」だったり「歴史的な資料」だったりするので、おもしろ可笑しいことより、間違いがないこと。正確であることが問われるからだ。僕も子供の頃、学校の授業で何回かドキュメンタリーを見せられたが、たいてい退屈なものだった。

どうも日本人の感覚は「教育」=「退屈」で、それを我慢して学ぶことが勉強と思っている気がする。だから、その手の作品を作る人も真面目で「観客がどう感じるか?」より、史実に忠実か? 間違いはないか?ということを重要視する。ま、それも大事な点ではあるのだが....

その結果[ドキュメンタリーは退屈!」という印象が広がったのだろう。実際、劇映画に比べてドキュメンタリーは客が来ない。東京でも極一部の映画館が良質なドキュメンタリーを上映するが、ある一定の数しか来ない。シネコンではまず上映されない。

そんな常識を覆したのがマイケル・ムーアである。「ボーリング・フォー・コロンバイン」は大ヒット。「華氏911」は日本でも大ヒットした。「シッコ」は涙が溢れる感動作だったし、日頃ドキュメンタリーなど見ない層が映画館に詰め掛けた。真面目に事実を伝えるだけのドキュメンタリーに彼はエンタテイメント性を持ち込んだのだ。

話を戻す。ドキュメンタリーが詰まらない、もう一つの理由がある。その手の安易な作品が多いからだ。映画のDVDについているメイキング。あれもドキュメンタリーだ。でも、退屈なものが多い。

「この映画はどんな撮影をしたんだろう?」

と興味を持ってみても、5分で退屈するものが多いのだ。理由は簡単。「お金かけない」「時間かけない」「手間かけない」だから、面白くない。マイケル・ムーアを見れば分かるが、ドキュメンタリーだって面白くなる。

ま、彼はあえてバラエティ的な手法を使っているので王道とは言えないが、昔のディズニーの記録映画は良質なものが多かったし、「ビューティフル・ピープル ゆかいな仲間」野生動物の記録映画だったが、笑えて、感動して、泣けるものだった。でも、それらは多額の制作費と時間が注ぎ込まれている。それを日本の、特にメイキングは

「お金かけない」「時間かけない」「手間かけない」

当然、面白くない。僕も前作で(予算の都合で)メイキングを大学生に頼んだが、そのために本当に酷い映像しか撮れなかった。それをどうにかしたいが予算はない。だから、「時間」と「労力」をかけて編集した。

お金、時間、労力。どれかをかけないと良質のものはできない。しかし、ドキュメンタリーは儲からない。だからお金がかけられない。時間もかけられない。働けば働くだけ賃金が低くなる。

監督デビュー前に担当したメイキングの編集。ギャラは20万だった。締め切りまではかなりの時間があったので、3ヶ月かけて完成させた。とても評判が良かった。でも、賃金は20万で3ヶ月=1ヶ月7万弱になってしまう。朝から晩まで仕事してそれ。家賃も払えない。その後、しばらく借金して生活することになった。が、担当者にこう言われた。

「お前は仕事が遅いんだよ!」

ー遅いのではない。時間をかけたのだ。それが理解されない。時間をかけたから、いいものができた。ギャラの範囲内でやったら、そこそこのものしかできない。それを担当者は理解できない。締め切りに遅れた訳でもない。彼らにとって作品クオリティはどちらでもいいのだ。だから依頼されたスタッフは手軽に時間かけずに作る。当然、大したものではない。でも、担当者は気がつかない。

それでも良質の作品はある。沖縄を題材としたドキュメンタリー。原発事故を描く作品。だが、そのほとんどは手弁当に近い形で、お金のためでなく頑張る作家やスタッフの奮闘によるものだ。それで十分な賃金を得ている人はいないだろう。情熱だけ。でも、だからこそ、いいものができる。

今回の沖縄戦ドキュメンタリーも同じ。予算だけで言えばNHKのその手の番組の何分の1しかない。それでどこまで出来るか? 「お金」「時間」の縛りがある。それなら「労力」をかけるしかない。それと方法論だ。真面目に史実を伝えるだけがドキュメンタリーではない。退屈なものを我慢して見るのが勉強ではない。ステレオタイプに縛られてはダメだ。その辺のことはまた別の機会に書かせてもらう。



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「沖縄戦ドキュメンタリー」進行報告 編集再開。手間をかけないと良質な作品はできない? [編集作業]

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「沖縄戦ドキュメンタリー」進行報告 編集再開。手間をかけないと良質な作品はできない?

昨日はナレーション原稿に従い、切り出した証言映像を各パートにはめ込んでいく。と言っても分かりづらい。料理でいうと、人参、玉ねぎ、ジャガイモ等を刻んだものを鍋に入れていく作業。

それら野菜を順番に食べるより、混ぜて炒めれば、一つ一つを食べるのとは違った味わいが生まれるように、映像作品でも、一人の証言を延々と見せられるより、少し話がしたら別の人が話す。という方が飽きずに見てもらえる。それを沖縄戦の戦闘順に並べて行くのだ。

とりあえず、そんな形で並べて5〜6時間のものを作る。そのあとに見やすいように70分位を目標にカットして行く。楽をするならば、並べる段階で

「これは要らないかな〜」

とか判断して削除すれば、改めてカットする作業は要らない。繋ぎ終えた段階で70分くらいのものが出来る。

だが、並べて見て前後の映像を見て生きてくるものもある。それを証言映像のみを見て判断することはできない。時間を節約して、早く仕事を進めたい。クオリティは二の次というのならそれでいいが、僕のやり方は一度全部繋ぐ。そこから短くすることでクオリティーが高まる。

テレビニュースの特集コーナーとかはクオリティより「早さ」が優先させる。作品としてレベルが高いことより、その話題が忘れられない内に放送することの方が大事。それは分かる。が、それ以外のドキュメンタリーでも編集が楽な方法論がよく使われている。ソツなく作られてはいるが、何も感じるものがない作品はその手が多い。

しかし、今回はそれではいけない。お金や労力の問題ではない。働けば働くほど1日の賃金は安くなる。が、大事なことは

「沖縄戦を伝えること」

そのためには楽な編集をすること、時間をかけないことに重きを置いてはいけない。よく聞く話だが、

「このギャラだと、1週間でやらないと赤字だよな」

という感覚で仕事はできない。大事なのは観客に何を伝えるか?なのだ。


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