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取材なし。シナハンなし。お手軽にシナリオを書く若い作家たち=それでは記憶に残る感動作はできない。 [映画業界物語]

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取材なし。シナハンなし。お手軽にシナリオを書く若い作家たち=それでは記憶に残る感動作はできない。

僕が脚本家デビューする前あたりまでは、それなりのギャラがもらえる仕事であり、額も一桁違うと現場スタッフから羨ましがられたそうだ。でも、それは当然のことであり、シナリオは映画の設計図。それがなければ撮影はできない。その設計図がまずければ、どんなに現場スタッフが頑張ってもいい作品にはならない。どんな巨匠が監督してもダメ。それほどシナリオは重要なもの。

ただ、僕が脚本家デビューした頃から、映画自体の製作費が下がりだした。それまでは1ヶ月かけて撮影していたのに、3週間で撮りあげる。撮影期間が短くなれば人件費、機材レンタル費、食費、交通費、宿泊費がやすくなる。それが目的。だが、スタッフとすれば1本の映画を作り上げる労力は同じ。それをより短い時間でやらなければならない。そのために「やる気」をなくす、手抜きをする。「いいものを作ろう!」という思いがないスタッフが増える。

現場だけではない。脚本料も下がった。どんな弊害が生まれるのか? 昔はシナリオを書く前にシナハンという作業があった。今でもちゃんとやっている会社もあるが「行きたければ自腹で行け」みたいなところが多い。シナハンというのは映画の舞台となる街を訪れて、どんなところなのかを取材すること。例えば、イタリアに行ったことがない人がイタリアを舞台にシナリオは書けない。でも、その頃から、そんな理不尽なことが増えてきた。

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物語の題材となるもの。例えば野球、サッカー。高校生の青春。それを題材に物語を作るなら、詳しく知らなければならない。そのためには取材。スポーツならルールを勉強。試合を実際に見たり、選手にインタビュー。青春ものなら現役の女子高生から話を聞く。とても大事なことだ。が、製作費の削減で製作会社はそのために経費を使い、時間を費やすのを嫌がるところが増えた。

僕が仕事したPの中には「調べなくてもいいから、とにかくシナリオを書いて欲しい」という奴までいた。調べないでどうやって書けばいいのか? 野球やサッカーを知らない作家がどうやって、それらを題材にして物語を考えればいいのだ? 監督デビュー前で脚本家時代の僕は取材に力を入れたい方だったので、会社が経費を出さなければ自腹で調べた。

が、「調べている時間が無駄だから、早く書け」と言って来たPがいた。当然、僕とはうまく行かず、トラブルの連続。二度と依頼はなかった。でも、世渡りのうまい若い脚本家は違う対応をした。

シナハンができなければ旅行ガイドの写真を見て想像、ロケ地をイメージ。スポーツものなら、「***入門」のような本を1冊読んで物語を考える。取材やインタビューを一切しない。経費が出ないことを自腹を切ってまでやりたくないという。スポーツものなら、同じスポーツの漫画を読み、感じを掴んで器用に書いてしまう。

そんなことでレベルの高いシナリオが書けるはずがない。が、そこがプロ。褒めてはいけないのだが、彼らは、例えばサッカーの物語なら、サッカーを知らなくても、ルールを把握していなくても書けるストーリーを考える。サッカーが背景には出てくるが、具体的なサッカーの苦労とか、楽しさとかを避け、青春とか、恋愛をメインにして物語を作ってしまうのだ。

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それはもうサッカードラマではない。が、俳優にユニフォームを着せ、練習風景のシーンを撮れば、見た目にはサッカー映画に見える。そして製作会社も、Pも、題材が詳しく描かれていることより、時間も、金もかけず、お手軽にそこそこのシナリオが上がってくることを喜ぶ。彼らにはサッカー愛はない。映画愛もない。観客が感動するかどうか?も関係ない。決められた予算で時間をかけずに作品が完成すれば、それでオーケーなのだ。

製作側のそんな態度と、製作費削減の現実。取材をせずとも、そこそこのシナリオを書く脚本家が重宝がられた。その意味ですでに時間と費用をかけて取材した原作があるものは楽。原作料を払ってもその方が安く済む。日本映画で原作ものが多い理由もそこにある。オリジナルシナリオだと、そうは行かない。

だからシナリオがオリジナルだと、特にテレビドラマだと、その手のお手軽ものが多いのはそのせいだ。ま、映画でも同じだが、物語の背景や題材を調べずに書くのはカップラーメン。時間も経費もかけて作る手打ち生麺のシナリオ出ないと、感動も少なく、記憶にも残らない....。


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太平洋戦争の勉強を再開。DVDでドキュメンタリー見る。 [戦争について]

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太平洋戦争の勉強を再開。DVDでドキュメンタリー見る。

戦争を学ぶにはやはり文章よりも映像。映像で見ることで把握できる。いくら巧みな文章でも、戦車や戦艦の形をイメージできないし、戦場も想像しづらい。

基本、文章は経験のあることを呼び起こすのにはいいが、見たことも経験したこともないことを伝えるには映像が向いている。

行ったことのない外国の風景を文章で説明されても、想像できないが、映像なら一発で伝わるのと同じ。

そんな訳でDVDでドキュメンタリーを見る。これらがスペシャルなのは米軍が製作したものであること。アメリカが凄いのは戦争のメイキングを撮っているということ。お陰で「ドキュメンタリー沖縄戦」を作った時に使用することができた。沖縄戦だけでなく、あらゆる戦闘を記録しているのだ。

何より写真ではなく、動画というのが戦争というものをしっかりと伝える。これから見る作品も当然、アメリカ人視点であり、日本は敵である。当時のアメリカは日本をどのように見て、どのように感じていたか?その描き方も興味深々である。


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名画座の想い出ー今も残る東京の早稲田松竹。懐かしい。 [映画業界物語]

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名画座の想い出ー今も残る東京の早稲田松竹。懐かしい。

写真を白黒にしてみると余計に懐かしい。1980年代前半に何度も行った名画座。高田馬場の早稲田松竹が今も営業を続けており、38年ぶりに訪れた。レンタルビデオの影響で80年代後半に次々に潰れて行った名画座。僕は当時、横浜に住んでいたので、近郊の名画座によく行った。

横浜日劇、横浜名画座、大勝館、蒲田パレス座、天王町ライオン座、大森キネカ、自由が丘推理劇場、東京まで足を伸ばして、池袋文芸坐、高田馬場パール座、そして早稲田松竹。

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2本立てで5〜600円。指定席なし。映画学校で学ぶ以上のことを名画座でたくさん学んだ。二本立てなので腹が減る。菓子パンをかじりながら見た映画の数々。シネコンが出来始めた頃は音がよく、綺麗で、日本の映画環境もよくなったなあと嬉しかったが、どこに行っても同じ内装。2回続けて見れない。席を変われない。

名画座の魅力。久々に思い出した。


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「レイジングブル」の想い出ーマーティン・スコッセッシは何を伝えようとしているのか? [映画&ドラマ感想]

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「レイジングブル」の想い出ーマーティン・スコッセッシは何を伝えようとしているのか?

早稲田松竹で「キングオブコメディ」を見たら2本立て。併映は「レイジングブル」同じスコッセッシ+デニーロコンビなので実に相応しい作品。しかし、長い、重い映画でもある。おまけにすでに見ている。どうしようかな?と考えた。

「レイジングブル」はあれこれ思い出がる。公開された1981年。僕は横浜に住み、映画学校に通っていた。ある夜。突然に友人が訪ねてきて「今、レイジングブル見た帰りなんだけど、ぶっ飛んじまったよ!」と話し出した。誰かに感動を伝えたかったという。おまけにアカデミー作品賞も受賞。見なければと思いながら、なぜか見ていない。

それがアメリカ留学中にリバイバルがあり、日本人の友人と映画館に行った。ら、上映時間が急に変更されており、すでにその日の上映は終わっていた。で、この時も見られず。帰国した頃はレンタルビデオが全盛だったが、ちゃんと見たいと思いレーザーディスクを買って見た。

オープニングから凄い。白黒の映像。「インターメッツォー」(この曲はCM等でもよく使われる)が流れ、スローモーションでデニーロがシャドーボクシング。それだけで震えた。が、地味な物語。レーザーディスクということもあり休憩できる。そんなこんなで最後まで見たのは、かなりあとだった。やはり、映画は映画館で見るべき。名作というのは分かるが、当時から僕はスコッセッシよりルーカス、スピルバーグ派だった。

それを思い出した。「レイジングブル」劇場で見ていない。ということで、オープニングだけでも見ておこうと思ったら、129分。最後まで見てしまった。やはりスコッセッシは凄い。簡単にいうとこの物語は、実在したチャンピンオンであるジェイク・ラモッタの半生を描いたもの。それを白黒映像でリアルに、デニーロが迫真の演技を見せる。

物語は3つある。ラモッタと妻ビッキー。ボクシング。マフィアとの繋がり。生活の間に試合シーンが挿入されて行くのだが「ロッキー」のような爽やかストーリーではなく、ボクシングは強いが、嫉妬深く、妻をすぐに殴る。少々精神的におかしいラモッタが成功し、落ちぶれて行くのを執拗に描く物語。スコッセッシ映画の主人公は先の「キングオブコメディ」も「タクシードライバー」もそうだが、心を病んでいる。精神病か精神障害を抱えている感じだ。

おまけにラモッタは単純思考の男で、兄思いの弟が妻と関係したと思い込んで半殺しにしたり、金が必要だからとチャンピオンベルトに埋め込まれた宝石を外して売ろうとしたり(ベルトのままの方が高く売れる)バカで嫉妬深い。すぐ暴力を振るうDV夫。通常、映画の主人公になるのは正義感が強い、困った人を助ける。不正を追求するという人たちなのだが、スコッセッシはダメ人間、負け組を描き続ける。

「キングオブコメディ」 の主人公も。トラビスも、今回も、デニーロが演じるキャラは皆、本人は良かれと思っているのだが、周りが迷惑し、やがて皆が去って行く。それに気づかず、逆恨みし、さらにドツボに落ちて行くというパターンがある。スコッセッシはそんな人生を見つめることで何を伝えようとしているのか?興味深いものがある。


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「ジョーカー」に影響を与えた「キングオブコメディ」ってまんまやんか!? [映画&ドラマ感想]

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「ジョーカー」に影響を与えた「キングオブコメディ」ってまんまやんか!?

アカデミー賞に最多ノミネートされたことでリバイバル上映中の「ジョーカー」3回目を見たばかりだが、早稲田松竹でその原点ともなった「キングオブコメディ」が上映されると知り出かけた。

この映画は1984年公開のアメリカ映画(2本立てだった記憶があるが確かではない)あのマーティン・スコッセッシ監督で、あのロバートデニーロが主演の映画。タイトルは知っていたが、興味引かれず当時は見ていない。「タクシードライーバー」は大好きだし、「ニューヨークニューヨーク」も見ている。「レイジングブル」の評価もよく知っていたが、どうにも見たいと思わなかった。が、それが失敗だった。

映画は冒頭から「ジョーカー」そのもの。展開も「ジョーカー」デニーロ演じるコメディアンの主人公も「ジョーカー」だった。いや、逆で「ジョーカー」が「キングオブコメディ」の影響を受けているのだ。いやいや、影響なんてもんじゃない。この映画がベースになっている。「タクシードライバー」より完全にこちら。この映画に「タクシー」を足してリメイクすると「ジョーカー」になる!というくらいだ。

しかし、パクったとか、真似したということではない。「ジョーカー」は完全に世界観を確立している。言うなれば「スターウォーズ」は「隠し砦の三悪人」から多大な影響を受けているが、パクリではないというのと同じ。オリジナルを尊敬しつつ、そのエッセンスを昇華して新しいものを作り上げている。

アホキン・フェニックス演じるジョーカーも良かったが、デニーロのコメディアンも狂っていた。また、芸能界というか、業界のやり切れなさ、ずるさ、大変さが良く出ている。僕も映画の世界の片隅で仕事をする者として共感することが多かった。チャンスを掴めない苦しさ、悔しさ。でも、成功した者にはまた別の苦しみがあること描かれている。

人気コメディアンのジェリーが歩いていると、電話ボックスにいた夫人がサインを求める「あなたはアメリカの誇りです!」というが、「電話に出て甥に一言」との頼みを断ると「癌になって死んじまえ!」と罵倒される。そんな経験。芸能の仕事をしていると時々ある。映画を応援してくれた人が後になり、あまりに無理な頼みをして来たので断ると「お前は最低の奴だ!恩知らず!」と罵倒されたこと僕もある。

キャストには懐かしい人が出ていた。デニーロが恋するバーの女性はダイアン・アボット。デニーロの実生活の恋人である。76年の「タクシードライバー」にも出演。ポルノ映画館の売り子を演じている。あと、ジェリーの事務所でアシスタントをしている女性はシェリーハック。「チャーリーズエンジェル」の後期メンバー。学生時代に見ていた映画やドラマの俳優が出ていると、同級生と再会したような嬉しさがある。「キングオブコメディ」関係で朝まで話ができそうだ。


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今も残る東京の名画座ー早稲田松竹。38年ぶりに訪れた。 [映画業界物語]

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今も残る東京の名画座ー早稲田松竹。38年ぶりに訪れた。

映画学校の学生だった10代。時々、行ったのがここ高田馬場にある名画座・早稲田松竹。通ったというほど行っていないが、何度も行った。当時は横浜に住んでいたので遠かったというのもあるが、ここでモンティパイソンの映画を見たのを思い出す。

その早稲田松竹。今もある。凄い。名画座といっても今の若い人は分からないかもしれないが、ロードショー館。もう少し古い言い方をすれば封切館。そこで映画は最初の上映があり、しばらく経ってから2番館に上映が移る。そしてロードショー公開が終わったら、名画座と呼ばれる2本立ての映画館で上映される。

当時は500円とか600円で格安。それで2本見れる。学生に人気で僕も高校時代からその手の名画座に通った。大阪なら戎橋劇場、大毎地下劇場。関西に名画座は少なかったが、東京は凄い数で、雑誌「ロードショー」の紹介ページを見て憧れたものだ。

だが、年を追うごとに閉館が増え、レンタルビデオの影響が一番大きいと思うが、80年代後半からその多くが消えて行った。僕がアメリカから帰国した90年にはほとんどがなくなっていた。そんな中、今も営業を続ける数少ない名画座の1館が早稲田松竹だ。

と言って僕もレンタルビデオで済ませてしまい、この20年行ってない。それがレンタルでもなかなか見つからない「キングオブコメディ」を上映すると聞き、38年ぶりに劇場を訪れた。建物は建て替わっていたが、ほぼ同じような建物。2本立て。指定席なし。入れ替えなし。そこで80年代の映画を見ていると、タイムスリップしたような気持ちになった。

古き良き時代。2本立て、3本立ての映画を見て1日を終える。菓子パンを買って、映画を見ながら食べる。午前中に入っても、劇場を出る頃はもう外は真っ暗。そんな映画から学校で学ぶ以上のことを学んだ。今回、見た映画については別記事で書かせてもらうが、本当に久々の2本立て。懐かしく思える。


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コロナウイルスと花粉症と、健康状態?! [コロナウイルス]

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コロナウイルスと花粉症と、健康状態?!

朝起きるとくしゃみ連発。え? コロナウイルスに感染? いや、これは花粉症だ。毎年、症状は酷くないが、朝はモーニングアタックを受ける。昨日はかなり暖かく、春の訪れを感じる。近所で梅も咲いているし、3月はやはり春なのだ。

寄る年波のせいか? 寒さに弱くなり、この冬はかなり用心。厚着していた。朝方に寒さで目が冷めることもあり、ヒーターを弱くつけて寝る。それでも朝の4時頃にはいつも寒さで目が冷める。それが理由なのか? このところ体調がよくなかった。もしかしたらコロナウイルス感染!と思ったが、咳は出ない。

2週間前に体力と気力の戦いがあったが、帰京してダウン。20時間ほど寝つけたり。そのこと書いたら、お見舞いコメントがいっぱい来て恐縮。なるべく健康のことは書かないのだが、ここしばらくの体調の悪さが何なのか?を考えている。

原因は先に書いた「寒さ」ではないか? それで体調が崩れ、体力が落ちる。ただ、60代を目前にして体力低下?とも考える。もちろん、それもあるだろうが、体調が悪い時にいっぱい歩いたりしたのがよくなかったのだろう。

ちなみに、歩き過ぎてスニーカーの底に穴。現地で新しいものを買ったのだが、今履くと少々大きい。現地では歩き過ぎて足が腫れていたので大きめのサイズを買ってしまったのだ。今は厚めの靴下にしてスニーカーを履くようにしている。話が逸れた。

ワインを飲んでもすぐに酔いが回り、寝てしまうのも体調のせいだろう。昨日はボトル3分の2を飲んだが、それほどでもなかった。どうも仕事を始めると、寒い部屋でも延々と作業してしまったりする。集中すると寒さを忘れるのだが、体はダメージを受ける。

幸い、人混みに行くことは少ないのでコロナの心配はいらないが今、感染したら、かなり酷いことなりそう。すでに高齢者の患者は何人も死亡している。限りなく高齢者に近い年齢?!注意したい。


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飛行機で1時間で行けるロケ地=映画製作にとってお得か? [映画業界物語]

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飛行機で1時間で行けるロケ地=映画製作にとってお得か?

時々、地方自治体の方から「監督、ぜひ、うちの町で映画を撮ってくださいよ」と言われる。ある町に仕事で行った時は観光課の課長さんがやってきて「ぜひ、市内を案内させてください」と言われた。課長さん自らの運転で市内の名所巡り。というのも、多くの自治体は今、財政難。新しい事業を始めるのも難しい。元手をかけずに収入が増えるのは観光。観光客が宿泊、お土産、食事とお金を落としてくれる。

が、京都、奈良のような観光地ならいいが、何ら有名な史跡もない。大自然の恵みもない町にはなかなか来てくれない。そこで映画のロケ地。映画の舞台となった町には、その映画を見て感動したファンがやってくる。映画が撮影されることでマスコミが紹介する。町で作るパンフレットにも映画「***」のロケ地と書ける。いろんな意味で大きなアピールができるのだ。ただ、映画製作者側からいうと簡単ではない。ある田舎町の方が言った。

「監督、うちの町は東京から遠いと思われがちですが、飛行機なら1時間ですよ! あっと言う間ですよ。ぜひ、映画を撮ってください」

だが、問題は時間ではない。お金だ。東京からその町まで飛行機だと片道3万2320円。往復で6万4640円。スタッフキャストが約50名。掛ける50で、300万以上。その内10名以上が何度も往復する。俳優もそれなりの人はビジネス・クラスにせねばならない。そして宿泊。地元ホテルに50人が数週間泊まる。飛行機代と合わせて700万以上。さらに現地で使うレンタカー。機材や衣装も郵送。その他の経費も入れれば1000万は必要になるだろう。

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もし、同じ物語を東京近郊で撮ればその1000万はかからない。その分を節約。あるいは他に回せる。CGで迫力シーンを作る。大爆破シーンができる。ロケ弁が豪華になる。いやいや、そんなもんじゃない。いろんなことのプラスになる。おまけに交通費や宿泊費がいくらかかっても、映画自体のクオリティは上がらない。5千万の製作費だとしたら、その内の5分の1は物語に関係のないことで消えてしまうのだ。

そこまでして、その町でロケして何のメリットがあるか考えると厳しい。京都奈良なら憧れる人たちがいる。北海道も同様。神戸横浜もあり。しかし、聞いたこともない町、歴史的な史跡もない。広大な大自然もない。その町で撮影して喜んでくれるのは、町の人たちだけ。わが町が映画でアピールできる人たちのみなのだ。だから「監督、ぜひ!飛行機で1時間ですよ」と言うのだが、その「飛行機で1時間」がどれだけ高くつくのか?分からない方が多い。

でも、それを理解し製作サイドのメリットを考える町もある。要は製作費が削減できることがあればいい。宿泊を地元の旅館やホテルが引き受け全部無料にする。食事を地元の人たちが全て提供。他、車、機器、ロケ地探し協力と、少しでも製作費が安くなるような便宜を図る。そんな支援をする街もある。

そうすれば多少遠くても「その町でロケしようか?」と言うことにもなる。その種の活動をするのがフィルムコミッションなのだが、それはまた別の機会に紹介。そんな風に「飛行機で1時間だから近い。ぜひ、うちの町で」は問題はあるが、考えればいろんな方法はある。また、そのことは紹介する。


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太平洋戦争をもう一度、勉強せねば! [戦争について]

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太平洋戦争をもう一度、勉強せねば!

沖縄戦に関しては「ドキュメンタリー沖縄戦」を製作したことで、かなり勉強した。が、勉強するにつれ「沖縄戦を知るだけではダメだ」と思うようになった。歴史はその1部だけを知っても本当の意味で理解したことにならない。その前後を知ってこそ、意味が分かる。

そう思って太平洋戦争の勉強を始めた。ら、それを理解するためには「日中戦争」を知らなければならないことに気づく。さらにその前の「日露戦争」これは膨大で、勉強に1年かかる!と、沖縄戦前後に絞ったのだが、その太平洋戦争。さらに勉強したい。

子供の頃から「ガダルカナル」「インパール」「レイテ」という言葉を聞いていたが、そこでどんな戦闘があったか?は詳しく知らない。たけし軍団に「ガダルカナル タカ」というタレントさんがいるが、どんな関係性があるのか?! 「沖縄戦」製作時の太平洋戦争勉強では、まだまだ足りない。その辺をあれこれ知りたい。

先日、戦中に作られたアメリカ側から見たハワイの日系人のドキュメンタリー。よくこんな映像が残っているな!と思えたが、amazonプライムで見つけた。これも興味深い。そう、日本側の視点だけでなくアメリカ側の視点で見ることも大切。いろいろ知りたいことがある。



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俳優業の厳しさ。ロケ地に呼ぶだけで経費3万円。それでも呼びたい実力と個性が大切。 [映画業界物語]

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俳優業の厳しさ。ロケ地に呼ぶだけで経費3万円。それでも呼びたい実力と個性が大切。

遅くなったが、ワークショップのことを報告。今回も素敵な面々が集まり。4時間のレッスン。実力派が集合。それぞれの力を見せてもらい、長所と短所を指摘。その辺は僕の得意とするところであり、正解率は高い。だから選んだ新人がよくブレイクする。

俳優もそうだが、アーティストは意外に自分の良さが分からない。個性があるのに「俺は個性がない」と思い込んだりもする。そして欠点には気付きやすいが、どう克服するか?がなかなか分からない。そして、人間としての短所こそが、演技の上で武器になることを知らない者も多い。

今回、参加してくれたメンバー。全員ではないが、即戦力と言える人たちが何人もいて、いずれ現場でご一緒したい。それと実力はもう一息だが、努力しているし、思いもあるし、これから伸びていく若手もいた。本当にこんな連中を現場に呼んで、どんな役でもいいから演じてもられば、とても勉強になり、成長するのだが、現場に呼ぶのはとても難しいのだ。

もし、東京で撮影があれば、ノーギャラでも、勉強のために呼んで小さな役でも演じてもらうことができる。が、例えば静岡ロケ。前回の撮影現場だと新幹線で片道1万弱。往復で2万。宿泊が1泊6千円。飯が3回で3千円とすると3万円になる。ギャラなしでも、1人の俳優を呼ぶのに3万円が必要。10人だと30万だ。これは大きい。

俳優の勉強のために使える額ではない。つまり、勉強ではなく、それなりの力を示せて、その役を演じ切れる実力があるものしか呼べないということなのだ。それが撮影であり、低予算の現場。僕が気に入ったからと無理を言えることではない。かわいい女優がいる。仲良くなりたい。だから、呼ぶということはできないし、やっては行けない。

それなら、その3万円を別の有効なことに使うべきなのだ。小道具、衣裳、レンタカー、機材。それらに使えば撮影がスピーディになったり、よりよいアングルで撮影できたりする。だから俳優は実力があるだけでなく、個性があり、他の俳優では替えが効かない存在になってこそ、交通費も、宿泊費も、食費も出して、さらにギャラを払ってでも現場に呼ぼうということになる。

本当に厳しい世界だ。が、今回のメンバーにそんな存在は何人もいた。あとは、次回作で彼らが演じられる役があるかどうか?それがまた厳しいが、彼ら彼女らと仕事が出来る日を楽しみにしている。


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