編集の霊が降りて来そうな感じ? [「沖縄狂想曲」]
編集の霊が降りて来そうな感じ?
ここまで持ってくるのが大変だった。格闘家やボクサーならジムに泊まり込み、試合に向けて集中。闘争心を掻き立てるプロセス。自宅にいては家族と接するし、和気藹々と日常に浸ってしまうので、それを断ち切り練習に励むためにジムで生活する。
僕の場合は編集室に閉じ籠り、映像と格闘する。人に会わない。話さない。電話に出ない。そうやって作品の世界に入り込む。しかし、2週間ほどで人に会う仕事がある。どんなに入れ込んで作業しても、そこで解除されてしまい、また霊を呼ぶところから始めねばならない。
また、入れ込み過ぎて帰って来れないと、仕事で人と会ってもうまく話せないということもある。この2週間は軽めに作業しないと、ヤバいかもしれない。また、現在は編集モードの入り口であり、このまま上手く入り込めるかどうか?は分からない。ちょっとしたことで扉が閉じて、霊が去って行くこともあり得る。
シナリオと編集は集中力だ。孤独の戦い。自分で自分を追い詰めて作業せねばならない。刀鍛冶であり、格闘家と共通するものがある。
僕の編集方は独特だ。 [「沖縄狂想曲」]
僕の編集方は独特だ。
テレビや映画の編集マンが見たら「あーあー何やってんだか!」と注意したくなるような方法。僕の編集はそんなスタイルだ。取材も同様。「それじゃ出たとこ勝負だよ!」と批判されたことが何度かある。だが、テレビ・ドキュメンタリーを担当したときも、準備万端で昔ながらの手法で取材したチームより、クオリティが高いものが出来た。局内でもかなり評価されたのを思い出す。
昔からの習慣だからと、無意味なことに時間やお金はかけたくない。運を呼ぶのも実力の内。紙の上に書いただけの企画書に縛られる必要はない。作品は文字ではなく映像で伝えるものなのだ。それが分からない人たちが今も多い。その種の人たちのアドバイスを聞くのは、時間の無駄。僕の方法論を説明するのも疲れるだけ。要は結果的にいいものが出来れば、どんな方法論でもOKなのだ。
さて、今回もそんなスタイルで進めている。昨年の内にデータのカテゴリー分けはほぼ済んでいたが、残っていたのを本日整理している。「ん?」本編の編集始めたんじゃなかったの?「うん」始めていた。が、それは感触を見るため。料理だって、素材の味を確かめるために一口食べたり、舐めてみたりするだろう。それと同じ。
そのことで違和感を持った。うまく言えないが何かが違う。そんな時に構わずガンガン進めると後で後悔する。化石掘りでいうなら、何の恐竜であるか?その予感が掴めない。トリケラトプススか?トラコドンか?
あと体力もないので、ここしばらくは作業も軽めに進めた。今、無理して喘息がまた悪化しても敵わない。
作業を早めに終えて、あれこれドキュメンタリー番組を見る。「映像の世紀」じゃ秀悦だった。対して「Nスペ」はほとんどが詰まらない。なぜなのか? ドキュメンタリーだけでなく、ドラマを見ながらも考える。あれこれ見ていて「ジョジョ」で感じることがあった。なぜ、あの物語は面白いのか?そして、韓国映画の「非常宣言」を見て確信を持った。それだ!
今回の題材は非常にシビアなものであり、真面目なものだ。内容的には重いが、見た目の派手さがない。そこが以前と違うところだ。そんな題材をどう料理すれば観客は退屈せず、興味を持って見てくれるのか? そのスタイルが掴めなかった。過去2作のドキュメンタリーを作っているが、それらとは同じスタイルでは伝わらないだろう。ある意味で今までで一番難しい題材だ。
オープニングはもう決めてあるので編集。序章は時間がかかるので、後回し。そして第1章のインタビューを編集。まず説明パートを入れる。ナレーション原稿を作り、テロップに変換。タイムラインに並べる。下絵も探して仮のものを挿入。その後に1人目のインタビューの頭を入れた。紙に①インタビュー**さんとか書くのと違い、映像で繋ぐと全体像が見えてくる。
だが、このまま、以前のように繋いでも面白くない。漠然とそう感じる。そうなると作業が進まない。頭の中で2人目のインタビューと、その次のチャプター、そこに嵌める映像を想像。言葉に出来ないが、何かが違う。ナレーション原稿に戻る。僕が勝手に書いては事実と違ってしまう可能性があるので、資料の中で正確な表現をした文章を探す。それを元にナレ原を書く。
そのナレーション部分には、どんな映像を入れるべきか? そうだ。残りのデータ整理をしよう。それらの映像を再度見て頭に全て入れる。整理してすぐに取り出せるようにする。だが、膨大なデータ量。昨年の内に整理したのは60%くらいか? 残りの処理。再度、見ることでイメージが確立してくる。
頭の中で作品が形作られていく。同時になぜ「映像の世紀」は感動的なのか?その答えがダブって行く。なぜ、「Nスペ」の「太平洋戦争」シリーズは感銘を受けないのか? そして、あの韓国映画。「ジョジョ」も同様。答えは皆、同じだ。そこまで分かると脳内でどんどんイメージが造られて行く。ここまでにすでに2週間ほどかかっている。焦る。
が、体力がまだ完全に回復していない。まだ、9時なのに疲労感が強い。夕飯を食べたせいもあるだろう。ここは無理せずに続きは明日だ。ただ、一晩寝ることで、このイメージが消えてしまうこともある。だから作業を続けたいが、春までの長い戦い。このテンションをキープしながら進めていかねば。