「ワンダーウーマン1984」アメリカの成長=まさに今、見るべき作品! [再掲載]
「ワンダーウーマン1984」アメリカの成長=まさに今、見るべき作品!
かなり面白いであろうと思って初日に観た。が、オープニングの活劇が終わると(最近の映画は頭にまずアクションシーンがある)本筋の説明が始まるのだが、あれ〜、今回の悪役は悪徳実業家か?という展開。この種の映画は悪役が誰なのか?で決まる。「007」や「インディジョーンズ」と同様だ。なのに実業家? 古くはゴールドフィンガー、レックスルーサー。また、そんな大金持ちが世界征服を企む話?70年代だな〜と不安になった。
ハリウッド映画。ついこの間まで悪い奴をぶち殺して、バンザーイという勧善懲悪のドラマが主流だった。その間に日本のアニメは特撮ものは「敵にも事情がある」「敵にも家族がある」という設定を打ち出した(ガンダム、平成ライダー等)もっと言えば第1期ウルトラシリーズでもそんなのがあった。なのに、ハリウッド映画は正義のために悪を倒すというものが主流。ところが90年代の「スパイダーマン」「ダークナイト」あたりから変わってきた。敵を殺さない結末が増えた。
悪人を殺して万歳!だったのが、悪人でも殺さない。あの「ウォーキングデッド」でめちゃめちゃムカつく敵・ニーガン。2年に渡って観たので、2年間ムカつき続けたあのニーガンでさえ、殺さなかった。そう、悪人を殺しただけでは解決しない。彼らの背景を考え理解しないと、共存も平和も勝ち取れない。それをアメリカは気付き始めたのだ。いや、アメリカ国民が理解したのだ。
最近の代表が「スーパーガール」悪の帝王レックスルーサーの妹がいい奴!他にも凄い設定があれこれ。全米視聴率ナンバー1になった。また、詳しく書きたいが、アメリカの視聴者は成長している。悪人を殺すだけでは解決しないことを理解。太平洋戦争では日本軍。第二次大戦はナチス。ベトナム戦争は共産主義。湾岸戦争はイラクと、毎回、悪役を仕立て、正義のアメリカが戦うというズルイやり方をしてきた。国民はそれを支持してきたのだ。
そのアメリカが「敵」や「悪の事情」を考え出した。悪であっても殺して終わりではいけない。そんなドラマが支持されている。アメリカ人のその成長がトランプが7000万票を獲得し、今、不正選挙を叫ぶ世論につながっているように思える。そんな時代。今回の「WW」は?と思ったら、悪役が実業家?と不安になったが、やはり今日のアメリカ映画になっていた。まさかの展開。悪vs正義の戦いではない。「大切なものは何なのか?」「それを失わないために何が必要なのか?」を伝える物語なのだ。
女性監督ならではのタッチ。心に染みる場面がいくつもある。ダイアナ・プリンスの苦悩が分かる。まさか、WWで泣けるとは思わなかった。1984年が舞台にした意味も分かる。ソ連崩壊前で核戦争の危機をはらんでいた時代。今の時代に通じるものがある。コロナ禍、大統領選前に作られたはずなのに、まさに今、考えるべきことが描かれている。ワンダーウーマン1人で大惨事を止めることはできない。国民の思いが彼女を後押しせねば世界を救えないという物語なのだ。誰かのことを言ってるようだ。いろんな意味でぜひ、観てほしい1本。見事だ。
昨年2020年に見た映画。記憶に残ったものを10本ほど選んでみた。 [2020]
今年は戦争について、あれこれ考えた。 [戦争について]
ジョンウェインが監督主演した「グリンベレー」ベトナム聖戦を謳った作品=国民を誘導し戦争を続けるための映画。 [戦争について]
日本で見ていると、単なる戦争映画に見える。単純で分かりやすく、製作費もかかっていてドンパチがあり、ハラハラドキドキもあって、泣けるシーンもある。娯楽大作となっている。
が、これはある種のプロパガンダ映画であり、まさに「ベトナムは聖戦だった!」とアピールする作品なのだ。単純明快な構図。北ベトナムは悪逆非道。南の女子供も平気で殺害。人権無視の危険な罠を仕掛けて、悪辣な活動を続ける。それを阻止し、南を助けようとするのが我らが?アメリカ軍という物語だ。まるで西部劇。悪い連中が街でのさばっている。そこに派遣されるのが連邦保安案。住民を救い、悪を打つ。しかし、ベトナム戦争はそんな単純なものではない。
公開は1968年。背景にあったのはアメリカ国内における反戦運動。
「いちご白書」等で描かれたように国内では戦争反対の声が学生たちを中心に上がり、世論はベトナム介入に反対だった。そんなその中で米軍がいかにベトナムに参戦する必要があるか?をアピールするために映画だった。
ストーリーも巧妙で、戦争に懐疑的である新聞記者役のデビッドジャンセン(逃亡者の主人公!)が従軍記者としてベトナムへ。そこで見つめる北軍の蛮行。殺される南部の住民。と映画を見ていると「こんな哀れな人たちを放っておいていいのか!」「アメリカは南を救わなくてはならない!」と思うように作られている。
しかし、実際のベトナム戦争はこの映画のようなものではなく、それこそ「プラトーン」「ディアハンター」であった。アメリカ軍が巻いた枯葉剤のために、奇形児が生まれたり、多くの住民が殺害。同時に多くの米兵も死んだ。このベトナム戦争。大義としては共産主義を止めるためであった。北を支援したのがソ連。南がアメリカ。代理戦争だったのだ。
同時に戦争をすれば儲かる企業がある。少しでも長く続けたい。勝つ負けるでなかったと言われる。その戦争を止めようとしたのがケネディ。そして暗殺された。後継のジョンソンはより多くの郡を投入。その後のニクソンはベトナム撤退を公約に大統領選に出たが、当選すると続行を決意する。
この流れだけ見ても分かるが、巨大な力が戦争を続けさせようとしたのだ。例え大統領を殺してでも。その視点で現在の大統領選を見るとよく分かる。戦争を4年間しなかったトランプ。彼は差別主義者と呼ばれて、今、引きずり下ろされそうになっている。あの時のケネディと同じだ。その後に控えるジョンソン、ニクソンが今回でいうバイデン 、ハリスなのだ。そう考えると、彼らがどんな役割なのか?すぐに分かる。
また、映画「グリンベレー」はファンタジーとも言える事実とは違った内容で、「南ベトナムを助けよう。悪辣な北を粉砕しよう」とアピールするのはまさに太平洋戦争中の日本だ。「鬼畜米英」と敵国のイメージを悪くして戦意を掻き立てた。しかし、ベトナム戦争がどんなものであったか? 日本の教育ではしっかり教えない。だが、映画を見ればその辺も見えて来る。「グリーンベレー 」と「プラトーン」を比べればあれこれ気付いてしまう。