映画界でチャンスを掴むということ=ある強運の俳優くんの場合 [映画業界物語]
映画界でチャンスを掴むということ=ある強運の俳優くんの場合
俳優の場合はオーディションに参加するのが第1歩。だが、オーディションだけが全てではない。小さな出会いから大きな展開が始まることもある。例えば、僕が監督した「明日にかける橋」出演者。その内の3人は僕のワークショップに来てくれた子たちだ。
「え、監督のワークショップに出れば出演できるんですか?」
と言われそうなので詳しく説明する。俳優の卵たちはこう考えがちだ。
「有名監督のワークショップに行けば、その監督の映画に出してもらえるかも?」
だが、ほとんどは監督にとってワークショップはアルバイト。そこから次回作のキャストを選ぼうとは思っていない。ただ、主催者はそれを匂わせて参加者を増やし、儲けようと考えている。なのに、こういう卵たちもいる。
「映画に出れると聞いてワークショップに出たのに、エキストラしかやらせてもらえなかったよ。高い料金払ったにダマされたなあ!」
これは大きな間違い。ワークショップに出たくらいで、それが参加費が1万円だとしても、それで映画に出られると思ったら大間違いだ。エキストラだって勉強。ダマされたどころかラッキーだったと言える。出演するということは、もの凄く大変なこと。
それが通常のワークショップのあり方。だが、僕は考えた。本来のオーディション。時間がない。1人5分ほどで判断せねばならない。5−10人と一度に会う。自己紹介と台詞読み。それだけで実践に耐える新人を選ぶのは大変。といいながら、僕はその中で、かなり凄い子たちを何度も選んでは来ている。ただ、短時間では実力発揮できない人もいるはずだ。
そんな中に、なかなかの実力者がいるかもしれない。そう思ってその時は3回のワークショップを行なった。役を決める最終日(彼らには一切伝えていないが)3人の候補者の内。最有力のA君は来なかった。B君はこんな連絡。
「最終日。撮影で行けません。残念です」
候補者はC君のみになる。ところが、来れないはずのB君が、後半戦で現れた「撮影が早く終わったので...」と。候補者B君とC君の決戦。遅れて来たB君がその役を勝ち取る。もし、撮影が早く終わらなければ、もし「もう、間に合わないから行かないでおこ....」と考えたら。結果は違っていた。最後は運の強さだ。これもチャンスを掴むということだ。努力だけではない。
また「明日にかける橋」の素敵な感想をYahoo!レビューに上げてくれた方が! [My Movie]
また「明日にかける橋」の素敵な感想を上げてくれた方がいる。
Yahoo!映画の感想は全体的にレベルが低いものが多く、見る力がない若い子が自分が分からないことがあると「突っ込みどころ満載!」と批判していることが多い。が、この方の感想はとても嬉しいもの。ぜひ、読んでほしい。「明日」DVDは全国のTSUTAYAでレンタル中!
こちら=>https://movies.yahoo.co.jp/movie/363702/review/74/?c=1&sort=lrf
「声」が伝える沖縄戦の悲しみ。プロの女優がそれを伝える [2019]
「声」が伝える沖縄戦の悲しみ。プロの女優がそれを伝える
「ドキュメンタリー沖縄戦」でどうしても声が欲しい場面があった。ドキュメンタリーなのでセリフではない。まあ、アフレコでもない。再現シーンなどはなく、すべて戦争体験者の証言と当時の記録映像で構成されている。しかし、どうしても1箇所だけ「声」が欲しかった。
しかし、素人では無理。プロの俳優でなければ..。誰ができるか? 沖縄戦の悲しみを伝える声だ。そう考えて男女1人ずつを思い出した。女優の方は水津亜子さん(写真)。テレビや舞台で活躍中。僕の映画にはまだ出てもらったことはないが、すでに2度仕事をしている。1度目は僕の監督作「向日葵の丘」の本読み。
本読みというのは、会議室などで座ったままシナリオを読む、一種のリハーサル。「向日葵」のとき、常盤貴子さん。田中美里さん。藤田朋子さんらメインの大物女優3人は超多忙で参加できず。若手の芳根京子ら3人だけで本読みを行なった。2015年のこと。その時、常盤さんら大人の女優のセリフを代わりに読んでくれる人が必要で、Pに頼んだ。プロの女優で、技術がある人でないと大女優たちの代わりは務まらない。
呼ばれて来たのが水津さんだ。見事に常盤さんらの代わりを務め、本読みはいい感じで出来た。演技経験がまだ少なかった当時の芳根(その後、朝ドラ「べっぴんさん」でブレイク。今は人気爆発の若手女優。コンビニNEWDAYの前を通るといつも彼女のポスターが!)たちはそのことで物語の流れをつかんだはずだ。
感じたのは、若手が勉強になったことと同時に、水津さんの技術の高さ。その日、渡されたシナリオをその場で読みこなし、常盤さんらの役、複数をこなした。できる人だ!と感じた。
その「向日葵の丘」のメイキング。僕が編集した。その作品のナレーション。芳根京子らを直接知っている人がいい、思い出したのが水津さんだ。本読みで一緒だった。知っていることはとても大事。ナレーションに「優しさ」が生まれる。
そんなことで「向日葵の丘」DVDの特典映像である「メイキング」のナレーションを担当してもらった。そして今回、「声」の仕事。かなり難しい。やはり、水津さんをお願いした。時間をかけず、カンがよく、実力がある俳優は大事。何度も監督に怒鳴られないと出来ないようでは、今の映画界では通用しない。
MA作業時に、スタジオに来てもらい、録音。素晴らしかった。本当に短い時間の作業だが、全身全霊で挑んでくれた。その様子。今は紹介できないが、その声から「沖縄戦」の慟哭が伝わる。こうして、様々なプロの力を借りて「ドキュメンタリー沖縄戦」は今年の3月に完成。12月に沖縄の那覇で完成披露上映会が行われる。ぜひ、見て頂きたい。
特報(動画)=> https://youtu.be/Wv5MK0fRauI
沖縄の美味しいもの。スーパーで見つけた。 [沖縄案内]
沖縄の美味しいもの。スーパーで見つけた。
3年がかりの取材。「ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶」
秋に沖縄で完成披露試写会が準備中とのこと。この機会にぜひ、観ていただきたい。
特報=> https://youtu.be/Wv5MK0fRauI