SSブログ

「超人機メタルダー」戦争のメカニズムを伝える物語=憎しみが人を支配し止められなくなる? [戦争について]

149019631_5022664967807767_1429909821234706104_n.jpg

1987年に「メタルダー」の名作エピソード「へオドグロス」三部作を見ながらも、アメリカ留学中の夏休みの帰国時に見たので最終回まで見ていなかった。それが昨日、amazonプライムで発見、最終回の3回前から見た。そして「ウルトラセブン」の最終回だけでなく、この番組も太平洋戦争が反映された作品であることを痛感する。

「メタルダー」の特徴は主人公より、敵のネロス帝国のメンバーに共感すること。先のヘドグロス編とか、完全に敵を応援したくなる。なのにメタルダーに倒され散って行く。なぜ、そんな展開にしたのか?そこには必ず作家の思いが反映されているはずだ。調べると、脚本家の多くはあの「特装最前線」を担当。先の記事で紹介した沖縄出身で金城哲夫の後輩でもある上原正三も参加。単なる子供番組になる訳がない。「特捜」も「太陽にほえろ」とは違い、社会派。監督も「特捜」担当。なるほどという感じだ。

さて、どこが太平洋戦争か?という前に、敵の組織ネロス帝国について説明せねばならない。この頃からの子供番組はやたら設定が複雑。大人にはついていけないものが多い。簡単にいうとショッカーやデストロンのような悪の組織なのだが、ウィキペディアから紹介する。「帝王ゴッドネロスを頂点とする世紀末の悪の組織。原子力潜水艦をも有する世界的な大企業桐原コンツェルンを表の顔とし、数々の犯罪ネットワークとも繋がっており、それらを陰で操り、株価の市場操作や兵器の密売、傭兵としての軍団員の派遣などによって多額の利益を得ている」

そのゴッドネロスとは何者か?というと「ネロス帝国の絶対的支配者。表向きは桐原コンツェルンの若き総帥。本名は村木國夫と言い、第二次大戦中には日本陸軍で技術将校を務め、連合軍の捕虜を生体実験にした罪で、戦後BC級戦犯としてシンガポールで処刑されかかるも、関係者を買収して失踪。後にアメリカで犯罪シンジケートの一員となり、過去の経歴を消すべく整形手術で顔と名を変え、現在は大企業の総帥」

そのゴッドネロスの配下に4軍団が存在する。ヨロイ軍団、戦闘ロボット軍団、モンスター軍団、機甲軍団。「各軍団は軍団長である凱聖(がいせい)をトップとし、階級制が敷かれており、軍団員たちは出世を夢見て、日々手柄を競い合っている。軽闘士以上の地位のものはゴッドネロスに目通りを許され、意見を上申することもできる。また軽闘士の下には軽闘士見習い・奴隷・音楽ロボットが存在する」つまり、軍隊と同様。空軍、陸軍、海軍、海兵隊のように分かれている。

その中で先に紹介したヘドグロスのように、勝利して認められ出世することを夢見たり、恋をして幸せな家庭を築くことを願う者もいる。また、メタルダーに倒された仲間の無念を思い、いつか復讐すると誓う。友情に熱い者。死んで行く部下たちを哀れみ、悲しみに耐える軍団長もいる。最終回前、ほとんどの軍団員が死に絶え、その責任、部下の屈辱を痛感する戦闘ロボット軍団長 凱聖バルスキーは、1人1人の部下の名前を呼びながらメタルダーと戦う。だが、敗北し息絶える前に彼は別の思いを告白する。

「オレもおまえのように生きたかった。おまえは誰にも利用されずに生きろ」

つまり、敵である悪の組織のメンバーであるバルスキーもしがらみやルールに縛られ不自由な生き方しかできず、結局、誰かに利用されていることを痛感。敵ながら誰にも束縛されないメタルダーを裏ましく思っていたのだ。さらに言えば、仲間を殺された。悔しい。許せない。仇を撃つ。そんな感情にも支配され、いつまでも戦いをやめられない。そんな悲しみをも抱えていたのだ。そこまで来て気づいた。それって「戦争」じゃないか?

最初は美しい目的を掲げて戦うが、次第に殺された仲間の仇を打ちたい。許せない。復讐だ。と怒りに支配されて行くのが戦争。アメリカ軍はそれを利用。真珠湾を攻撃した日本軍への怒りで世論を誘導。参戦した。日本は「米英鬼畜」と国民に教え、憎しみを掻き立てた。そうして「怒り」で冷静さを失った両国国民は互いを憎み合い、戦闘を続けるほどに犠牲が出て、さらに憎しみを増幅させて行ったのだ。まさにネロス帝国とはそういう環境の組織。そこで幸せな家庭を夢見る団員でさえも、出世、復讐、責任、ルールに縛られ戦いに誘導されて行ったのだ。

興味深いこと。実はメタルダー自体が元日本軍の最終兵器として開発されたロボットという設定。その日本軍の兵器がまさに日本軍と言える理不尽なネロス帝国を倒して行くという物語。最後、帝王ゴッドネロスと戦いエネルギー制御ができなくなり、爆発してしまうメタルダーは友人に自分を破壊してくれと頼む。爆発は地球規模。多くが犠牲になる。涙を飲んで剣を突き刺す親友。こうしてメタルダーは死を向ける。悪を倒すためだとしても、兵器を残すべきではないという作家の思い。兵器があるから戦争が始まる。そして途中で降りられなくなる。 憎しみが憎しみを呼ぶ。それを描こうとしたのだろう。それが「超人機メタルダー」という子供番組である。



144698748_4971400386267559_9205383203717573495_n.jpg
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。