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メジャーで感動映画が作れない理由=マイナー作品でどう戦うべきなのか? [映画業界物語]

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メジャーで感動映画が作れない理由=マイナー作品でどう戦うべきなのか?

映画監督デビューから16年。信頼するスタッフさんから、こんなことを言われることがある。

「通常、低予算の映画はエログロ、SEX、ドラッグを扱い、家族で見れないものが多い。監督のマイナーな趣味全開とか多くの人が興味を持たないマニアックな作品。対して太田監督の映画はエンタテイメントだし、毎回感動し泣ける。全国のTOHOシネマズで拡大ロードショーしてもいい映画。なのに、こちらも毎回低予算。メジャー企業から資金は出ない。本当にもったいない。どこかがドン!と製作費を出せば大ヒット映画ができるのになあ」

嬉しい話だ。確かにメジャーから億単位の費用は出ない。一つには僕が著名な映画監督でないというのがある。だから、人気漫画の映画化!という話になっても僕の名前は上がらない。ただ、メジャーから声がかかったことがある。なのに、僕はその提案を断った。大手芸能プロのアイドルがメインの青春映画。スポーツもの。多くのメジャー企業が出資する。映画会社も大手だ。「青い青い空」で書道部の話をやったので、それを知る人が声をかけてくれた。

ただ、その芸能プロはあれこれ口を出すので有名。社長が気に入られないと「このシーンは撮り直せ!」みたいなことを言ってくる。その種の映画を担当した友人がいるが、もう地獄のような現場だったと聞く。

俳優は全て会社が選ぶ。原作はベストセラー。シナリオは別の人。スタッフもその会社でよくやる人たち。監督は撮影現場に行ってカット割りをするだけ。それもよくあるパターンを求められる。奇発なものはダメ。変更のアイディアを出してもPが却下。自由にできることは何もない。編集は別の人。とても監督とはいえない。そして関係者の誰にも作品に対する愛はない。

ただ、ギャラは良かった「だから我慢した」と言われた。その種の映画は高額の宣伝費をかけて公開。そこそこヒットする。が、評価する人は少ない。彼を知る業界人は「学生映画撮ってた頃は面白いもの作っていたのに、最近は全然ダメだなあ」という。皆、ガチガチに固められた現場のことを知らずにそういうらしい。彼だけではない。大手の映画はほとんどがそうだ。先のアイドルたちの出演する映画もそのパターンと思えた。

依頼者は僕を高く評価してくれているが、その種の現場をよく知る人ではない。こう答えた。「多分、撮影初日に社長と衝突して終わると思います。いや、準備段階でそうなるでしょう。だから、その手の映画は真面目で我慢づよくて、個性を出そうとしない。温厚な性格の監督にした方がいいと思います」そう、その手の映画は先のガチガチ現場に加えて、P、タレント事務所、スポンサー(製作委員会方式の時は10社以上)があれこれ要望や希望を出してくる。

「この場面はこうした方がいい」「主人公の部屋に自社の食品***を置いて欲しい」「食べるシーンも欲しい」「この友人役は我が社の***にやらせたい」「この港は**で撮って欲しい。社長の持つヨットがある」てな感じ。ど素人たちがあれこれ言いたい放題。A社が言ったこととBプロの要望は被る。それを調整するのが監督の仕事。結局、間をとってよくあるパターンに。個性のない。平凡な物語になる。多くが納得するのはそういうものしかない。

友人はいう「クリエイティブなんて微塵もない。俺は調整係じゃないんだ!」これがもし、監督に知名度があれば、三池崇史監督ならアクション。三谷幸喜監督ならコメディ。岩井俊二監督ならラブストーリー。会社は信頼してまかしてくれる。が、無名だとそうは行かない。特に先のアイドル映画だとガチガチしかあり得ない。だから、お断りした。が、それを聞いたあるスタッフさんに怒られた。

「監督。それを我慢して映画を作り、ヒットしたら、今度は自分が好きな作品を作ればいいじゃないですか? 断ったらダメですよ!」

気持ちはありがたい。でも、大人しく我慢して、思い入れのない物語を監督するくらいならサラリーマンになれていた。「これを作りたい!」と思うから頑張れる。その手の作品を何本も監督した友人のケースも、我慢して完成させても、また同じようなガチガチ現場の依頼しかない。

大宣伝するからヒットするが、誰の記憶にも残らない。結局、同じような人気原作の仕事しか来なくなり、歳とって扱いにくくなると、若手に話が行ってしまう。自分が撮りたい作品に繋がらない。

だから僕は低予算で好きなようにやる。シナリオは自分でオリジナルを書き、キャストも自分で決める。現場では自分のスタイル。編集も自ら。スタッフは信頼できるいつも仲間。「この作品を撮りたい!」という思いがあるからこそ、いいものが出来る。大ヒットはしないが、劇場では毎回、多くの観客が涙する。

そのスタッフさんの気持ちはとても嬉しい。が、大手のやり方ではいいものは作れない。テレビでよく見る俳優がたくさん出ている。人気原作の映画化。面白い作品はあるだろうか? だが、その手の映画には多くの出資が集まる。対して僕には来ない。

この状況を打破するには、メジャーからの依頼を受けてガチガチの現場で耐えて監督することではなく。低予算でも本当に作りたい作品を作り、それを大ヒットさせることだと思える。

が、それには多額の宣伝費が必要。低予算映画の宣伝費はしれている。チラシ、ポスター、舞台挨拶で終わりだ。どんな感動的な作品でも、多くの人に知ってもらわないと見てもらえない。いいものを作るだけではダメ。では、どうすればいい? ここ数年の課題である。


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