「ウルトラセブン」脚本家・金城哲夫が最終回に託した沖縄戦の思いとは何か?③ [戦争について]
アマギ隊員が拉致される。ゴース星人は世界の各都市を爆破。降伏を迫る。宇宙人の基地を発見したウルトラ警備隊は爆弾を乗せたマグマライザーで攻撃しようとする。作戦本部にいた隊員の1人は「でも、アマギが捕まったままです!」という。そう、マグマライザーで敵基地を爆破すると、ゴース星人だけでなくアマギ隊員も犠牲になる。でも、長官(藤田進)は「小さな犠牲は仕方がない。多くの人類を救うために諦めろ」と諭す。そしてキリヤマ隊長は「マグマライザー発信」と命令を下す。
その様子をビデオシーバーで見ていたのがモロボシ・ダン。「アマギ隊員を救わなければ!」と隠れていた小屋を出す。なぜ、ダンはアマギ隊員を助けようとしたのか? 昨今の日本映画では「犠牲は美しい」とよく描かれる。今なら「アマギ隊員の犠牲で多くの人類が救われた。ありがとう。アマギ隊員」というエンディングもありだろう。
でも、ダンは傷ついた体でアマギを助けるために、上司から厳しく言われていたのに変身しようとする。「やめろ。本当に死んでしまうぞ」忠告の声が再び響く。そこまでしてダンがアマギを助けようとした理由とは何か?
そう、それこそが脚本家・金城哲夫の思い。「沖縄戦では沖縄県民が犠牲になることで、本土は守られた。だが、多くを守るためなら、県民は死んでもいいのか? それは違うだろ。沖縄県民を守り、本土も守る。それが日本軍、本来の使命のはずだ」金城はそう考えていたと思える。それを反映させたのが、その場面。
ウルトラ警備隊はアマギ隊員の犠牲の上に、人類を守ってはいけない。アマギ隊員も、人類も、両方を守るのがウルトラ警備隊=(日本軍)の使命ではないか? なのに長官は犠牲を黙認。キリヤマはマグマライザーを発進させた。「違う。それではいけない!」と命を賭けて救出に向かったダンに、多くの犠牲を出した沖縄に育った金城の「思い」が託されていたのだと感じる。
そう考えて行くと、いろんなことが見えて来る。セブンという存在は金城の思いを託した沖縄人ではないか? 「沖縄戦の過ちを繰り返してはいけない。犠牲の上の勝利や平和に意味はない」それを訴えたのがウルトラセブンという存在ではないか?
アンヌの説明でセブンがダンと知ったウルトラ警備隊の隊員たちは、その後、誰も「セブン」とは呼ばなくなる。皆「ダン」「モロボシ」と呼ぶ。その場面に何度も涙が溢れそうになる。その答えも見えて来る。モロボシ・ダン誕生のエピソードを覚えているだろうか?そこに金城の悲しみがすでに込められていたのだ....。
(つづく)
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