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太平洋戦争=日本人は加害者か被害者か?背景にあるのは何なのか? [戦争について]

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漫画家小林よしのりの「戦争論」を読んだ90代の老人、著者に感謝の手紙を送ったという。戦争に行き、傷つき、多くの仲間を亡くした。が、今の時代になり、日本人はアジアで多くの人を殺した残虐な存在と言われ、孫にも軽蔑されていた。が、この本は「自分たちが国を守るために戦ったこと」を伝えてくれて嬉しかった。孫も理解してくれたというもの。

その老人は国策で戦争に送られた。殺さねば殺される戦場に行った。それを平和な時代になって、それもGHQの洗脳政策で「日本軍が暴走した」「日本が悪かった」という教育を受けた戦後世代から批判されると悔しいものがある。それを「戦争論」で「じいさんたちは勇敢に戦った」「日本を守った」と称えた。著者は言う。「日本人は被害者だという作品しか描けない。そんな空気がある。が、国を守るために戦った爺ちゃんたちを称えたい」この作品はそこからスタートしたと思える。しかし、そこが難しいところでもある。

戦後、その種の元日本兵は苦渋を強いられただろう。だが、称えると「戦争」自体に賛同することになる。だから、映画でもドラマで「日本軍」が悪かった!という方向で描く。「戦争論」の著者は「アメリカの罠にはまった」と主張。それは正しいが、今や同盟国であるアメリカを気遣い、多くの映画では米兵は登場せずに弾丸だけが飛んで来る。確かに著者の指摘通り日本はアメリカの罠にハマり太平洋戦争に参戦した。その意味では日本兵は犠牲者である。だが、戦闘で死んだアメリカ人も少なくない。その意味では加害者なのだ。

両方の面があるのに「立派だった」と称えることには疑問を感じる。ただ、著者のように直接、体験者と会い話を聞いて「あなたは加害者でもある」とは言えない。そして日本軍や政府の方針はどうだったか?は別にして、彼らは日本を守るために戦ったと考えているはずだ。その人たちに「戦争はいけないことです。犠牲者のことを考えなさい」とは言えない。命を賭けて戦った体験談を聞き、感動した著者が「立派だった」と描く。そこに戦争を語る難しさがある。被害者に会えば悲惨な生活を聞き「戦争はいけない」「アメリカ軍は酷い」と思う。が、立ち位置によって、いろんな正義や意味。価値観が存在する。

沖縄戦の取材をした時、若手の研究者からこんな話を聞いた。「戦争体験者からよく言われました。戦争を知らないくせに偉そうに語るな」彼らは戦後の生まれ。だから、体験はしていない。話を聞き、書物を読み、戦争を把握しようとする。それで意見を言うと体験者に批判される。死ぬような思いをした人がその経験を簡単に分析されれば気分が悪いだろう。「お前のあの怖さが、苦しみが分かるか!」と言いたくなる。だが、その研究者は言う。「体験がないからこそ、できることもあるはずです」ーその通りだと思う。あまりに酷い体験をすると、その事件を客観的に見れなくなる。家族を失っていれば敵を憎むはずだ。そのことで冷静な視点をなくす。

その研究者の指摘は大事。僕も戦争を知らない世代。爺さんは年寄り過ぎて戦争には行ってない。父親は若過ぎて徴兵されていない。身の回りには体験者がいない。だが、だからこそ「アメリカ軍にじいさんを殺された!」と言う憎しみはない。それどころか子供の頃からアメリカ映画にアメリカの音楽。ハンバーガーを食べて、毎日、コーヒーを飲む。おまけにアメリカの大学で学んだ。でも、だからアメリカの視点でも見れる。日本にいれば「アメリカ大好き!」と言ってられるが、実際に住むとアメリカの醜さも思い知る。そのことで別の視点で戦争を見つめられないか?

また、留学中の同級生は中国、韓国、台湾、インドネシアとアジアの人たちが多かった。彼らと知り合い、交流し、あれこれ学んだ。彼らの親、祖父母は日本軍に酷めに遭った人かもしれない。日本にいて勇敢な戦いをした元日本兵の話を聞けば、立派だと思うだろう。だが、そこで日本兵に殺されたかもしれない中国や韓国の人たちのことも想像してしまう。あのクラスメートの祖父だったかもしれない。英語クラスのアメリカ人の先生の父親が真珠湾にいたかもしれない。そう考えると、単純に「立派だった」とは思えない。

あれこれ考えていて、それら背景にあるもの。少しずつ見えてくるような気がしている。「日本人は被害者だ」「いや、加害者だ」「軍が暴走した」「日本を守るための戦いだった」いろんなことが言われるが、特定の背景にこだわり、一方的な見方をしても戦争の全貌は見えて来ないことを感じる。

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