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俳優に合わせてシナリオを書く。が、[マル秘]?も用意しておく=俳優はチャレンジャー。挑戦する時に名演技が生まれる? [映画業界物語]

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俳優に合わせてシナリオを書く。が、高い[マル秘]?も用意しておく=俳優はチャレンジャー。挑戦する時に名演技が生まれる?

もう少しシナリオの話をしよう。僕がシナリオを書くとき。当て書きをすることが多い。特定の俳優さんをイメージして役を書き、その俳優の魅力が前面に出るようにする。通常、俳優はシナリオを読み、その役になり切ろうと努力するのだが、それならその俳優を役に合った役を用意する方がより力を発揮できるからだ。

ただ、俳優たちは過去に何度も演じたタイプの役ではなく、今までに演じたことのない役に挑戦することが好き。力が入る。そこで、その俳優の魅力が前面に出ている役を作りながらも、今までに演じたことのない役を考える。ただ、俳優がその役を喜んでくれるだけでダメで、その役が物語の中でどんな役割を果たすか?も大事。いくら魅力的な役でも、物語にはまらないと意味がない。

そんな風に①俳優の魅力を引き出す役②過去に演じたことのない役③物語を進める意味がある存在。その3点の問題を同時に考えて、ルービックキューブの色を三色同時に合わせるようにしてシナリオを書く。

前作「明日にかける橋」では田中美里さん。藤田朋子さん。栩野幸知さん。富田佳輔くんらが当て書き。あと、板尾創路さんの役は当初、標準語だったが、板尾さんが候補に上がった時に関西弁に直した。そんな風に演じてもらう俳優さんが決まれば、その人に合わせてリライトしたりもする。

この台詞。Aさんなら普通に言えるけど、Bさんならちょっと違和感ある。ということがある。この場面。Aさんなら遠回しに言った方がいいが、Bさんならストレートに言ってもおかしくない。あるいはCさんなら台詞にしなくても、黙っているだけで気持ちが伝わる。とか、俳優さん、それぞれの持ち味、スタイル、表現法がある。それを生かしてもらうためのリライトである。

そう書くと、俳優がやりやすいように役を書いているように思うかもしれない。それだけではない。必ず、俳優たちが苦戦する場面も作る。俳優という職業は簡単に演じられる役より「えーー、どうすればいいのーー?」と悩むくらいの役で、やりがいを感じてくれる人が多い。と言って絶対に無理なことをしてもらっても、いい結果にはならない。そこで、超えるか?超えられないか?のハードルを用意させてもらう。

観客が見ていたら、何ら難しい場面ではなくても、演じる方にすれば前の日に眠れないほどの芝居ということもある。だが、そんな難しい演技に挑むことで、その俳優がこれまでに見せたことがない素晴らしい芝居を見せてくれることがある。その意味で監督業は俳優を谷に突き落とし「上がって来い!」というライオンの親のようなことも、せねばならない仕事。

多くの監督は自分がイメージする役に、俳優を近づくことを望む。が、僕の場合はその俳優に役を近づけた上で、かつてない挑戦をしてもらうことが多い。そのためには現場ではなく脚本の段階で、それらを用意せねばならない。このスタイル。脚本と監督が別々だとできない。その俳優を撮影現場で知る監督だからこそ、できる技なのだ。通常、脚本家は現場にはいないので、俳優の力や個性を知る機会がない。両方を兼ねていないと出来ない技。それが太田組スタイル。他にもいろんな技があるのだが、またそれは別の機会に紹介する。


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