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「復活の日」が世界配給されなかった理由?=多くの日本映画が海外で支持されない背景 [映画業界物語]

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「復活の日」が世界配給されなかった理由とは?=多くの日本映画が海外で支持されない背景

「復活の日」は製作費25億円。世界初の南極ロケ。豪華ハリウッド俳優共演。本物の潜水艦が登場。アメリカ・ロケもある超大作。角川は世界マーケッットで勝負しようと考えた作品だ。が、結果、買い手がつかず、日本の場面を大幅にカットして短くしたものを、ようやくアメリカのケーブルテレビが買ってくれただけで終わるという結末。なぜ、世界はこの映画を認めなかったのだろう?

まず、アメリカ人は不器用で、白人や黒人が出ていないと物語に感情移入できないことが多い。何よりアメリカ以外の映画を見る人の数は少ないので、慣れてないということもある。だから、アメリカをターゲットとした映画には、よくアメリカ人を登場させる。

元祖「ゴジラ」のアメリカ公開時に映画を再編集。レイモンドバー扮する新聞記者が日本に取材に来ていてゴジラに遭遇するという形にした。その部分だけ撮り足して挿入。そのことでアメリカ人の視点でゴジラ事件を見つめるという構成で、彼らはとても見やすくなる。映画は大ヒットした。

その後、東宝はアメリカ興行を考えた映画は最初からアメリカ人俳優を出演させた。「怪獣大戦争」や「フランケンシュタイン対地底怪獣」のニック・アダムスだ。あと、昭和「ガメラ」シリーズ。3作目のギロンから、日本人の子供とアメリカ人の子供が主人公となる。これが一番分かりやすい方法なのだ。それを考えてか?「復活の日」でもアメリカ人俳優が多数出演する。が、うまく行かなかった?なぜか?

アメリカ人が出てればいいということではない。観客にとって物語を見つめるための視点でなければならない。「復活の日」と同じ群像劇で人類の危機を描いたアメリカ映画「インディペンデンスディ」(ID4)こちらも多くの登場人物が出てくる。が、絞っていくと、パイロットのウイル・スミス。科学者のジェフ・ゴールドブラム。そして大統領だ。観客はその3人の視点で物語を見つめる。最後はパイロットと科学者が敵宇宙船に潜入。ここも「復活の日」と同じ構図。

その「復活の日」主人公は草刈正雄だが、日本に残された恋人多岐川裕美の話になったり、アメリカの大統領の話になったり、そこは群像劇だから分かる。が、最初から最後まで活躍するキャラがいない。「ID4」は先の3人が最初から最後まで活躍するので、どの視点で見ても最後まで乗れる。が、「復活」では草刈正雄は前半、そこにいるだけ。大統領も活躍することなく前半で病死。

最後に前に出るボースペンソンも、最初は画面のどこかにいるだけの存在。それも嫌な奴キャラ。最後になって存在感を見せるが、クライマックスで詰まらない死に方をする。それも日本を賛美して死ぬ。アメリカ人観客が見てどう感じるだろう。

人類が絶滅した後の南極基地ではジョージケネディがリーダーシップを取るが、核ミサイルが飛んだ後は、どうなったか?分からない(死んだはずだが)オリビア・ハッセーも途中から登場。なんで草刈さんを好きになるのか?分からない。最初から最後まで活躍するアメリカ人キャラがいない。

多分、脚本家(監督の深作欣二ら)がアメリカ人キャラを重要視していない。おまけに日本人から見た三人称で描くので、観客は彼らに感情移入して物語を見ることができないのだ。と言って、草刈正雄演じる主人公も、後半まで活躍することはなく、共感したり、応援したくなるキャラではない。事件解決の鍵を発見するが、実際的に何か変える役ではない(実際、核ミサイルも止められない)

もし、アメリカ人観客を考えるなら、ボースペンソンを主人公の1人にして、科学者ロールの草刈正雄がいて、群像劇としてその他の人たちを描く。そして大統領のグレンフォードと何らかの関係、因縁を作れば、フォード、草刈、スペンソンが「iD4」と同じ配置になる。そして、東京だけでなく、アメリカの荒廃した様子ももう少し描く。そうすればアメリカ人から見ても、世界最後の日を体験できる。そう考えると「ID4」はよく出来ている。

でも、「復活」は東京の崩壊を見つめるばかり。ー記録映像や風景を使ったものはあるが、米軍出動シーン等はない。エピソードもないー最後にワシントンは出てくるが、スペンソンはアホな死に方で、日本を賛美して終わり。これではアメリカ人は喜べない。

深作欣二らは勇敢な日本人を主人公にして、でかいアメリカ人に負けない活躍をぢ、どうだ!ヤンキーめ!という思いでシナリオを書いたのだろう。でも、角川さんからハリウッド俳優を入れろ!というので、本来、日本の総理を描く場面を大統領にし、南極基地でもアメリカ人を登場させたという感じではないか?

海外体験もなく、昭和1桁生まれで、米軍に統治された戦後日本を体験した深作に、アメリカ人が見やすい視点を入れろと言っても難しいだろう。ただ、多くの日本映画は同じような日本人視点の構図で描かれることが多い。だから海外で評価されない。日本人のための日本人映画になってしまうのだ。

ただ、明治生まれの黒澤はその辺を理解しており、彼の映画はワールドワイド。どの国の人が見ても分かる。また伊丹十三も、その辺を心得ており、アメリカ人が登場しなくても、アメリカで理解される物語を作り上げる。周正行監督の「shall we dance!?」も同様。そのテクニックはまた別の機会に語る。

結局、ワールドマーケットで勝負したい角川春樹。大和魂で映画を作る深作欣二。そのギャップが出てしまったのが「復活の日」だと思える。



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