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日本は大きな田舎① 田舎者根性がこの国をダメにしてはいないか? [MyOpinion]

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後輩監督のB君。僕と同じように地方で映画を撮る事が多い。そんな彼もこんなトラブルに遭った。映画完成後、地元がギャラが払わない。理由は同じ。

「俺たちはボランティアでやったのに、お前だけなんで金をもらう。金のためにやっているのか?」

そう言われたそうだ。事情は同じ。頑張れば頑張るほど「B君はいい人」だと思われた。監督料を要求すると「失望した!」とい言われた。しかし、そう言うのはリーダーの土建屋オヤジだけで、あとのメンバーは「監督はよくやった。ギャラを払うのは当然だ」と思っていたらしい。ただ、誰も、その場でオヤジには言わなかった。B君は言う。

「会議では皆、黙ったまま。僕が1人。オヤジに怒鳴られて、ーお前には失望した!ーと罵倒されて。でも、誰も弁護してくれない。皆、下を向いたまま。その後も声をかけてもくれない」

B君は思い出す。こんな事件もあったそうだ。撮影前の準備で問題が起きた。ある人が無責任でやるべきことをやらなかった。映画は小さなことから大きな事件になることがある。プロジェクト自体が崩壊することだってある。遊びではない。だのに地元の人は誰も注意しない。だから、B君があえてそのメンバーに厳しく言った。すると他のメンバーが彼を庇う。

「可愛そうだ」「彼も一生懸命だ」「そこまで言う必要はない」

おかしい。と、B君は感じた。

「事件を起こしたのは彼だ。その彼を誰も注意せず、注意した自分を批判する。どう言う人たちだ?」

けど、それ以外では皆、頑張っていたし、B君を支持、応援してくれていた。僕も似たような経験もあった。地方出身の友人に意見を聞いた。

「いかにも田舎である話だね。その人たち監督はよくやったと思っている。オヤジの勝手な思い込みだ。そう思っているはず。でも、反論しない。批判もしない。

問題を起こした奴を庇うのも同じ。つまり、ギャラを払わないと言うオヤジ&問題を起こしたメンバー。に対して何も言わない。沈黙。あるいは庇う。つまり田舎というのは問題を起こした奴を庇い、その問題を公にしたものを攻撃するのさ」

おかしいな話だ。いい大人が非常識。でも、友人はいう。

「被害者が事件を公にするからトラブルになる。お前が黙っていれば問題はないって考えるんだ。秩序を乱すな。静寂を破るなってことかな?」

なんじゃそれ!と思うが、地方は狭い世界だ。多くが顔見知り。今後も長く生活せねばならない。トラブルを避け、平穏に過ごそうとする。だから、問題があっても知らん顔する。解決したり、責任を追及すると揉め事になるからだ。恨まれたりする。恨んだりもする。

この先、同じ町で何十年も嫌な思いをして過ごす。その人が黙っていればトラブルは発覚しない。言い出したから揉める。だから、その人が悪いーという感覚。だから、ギャラを払わないというオヤジがいても、反論して、B君を庇って、彼と対立したくない。今後も地域で付き合っていく。問題起こすメンバーがいても、注意しない。それを注意したから地元のトラブルになる。注意しない方がいい。

いい悪いではなく騒ぎを起こした奴が悪い。そして、できるだけ関わらないようにする。知らん顔する。それが地域社会の世渡りルールなのだ。

昔「セルピコ」という刑事映画があった。アル・パチーノ主演。シドニー・ルメットが監督。ニューヨーク市警の腐敗を訴えた刑事セルピコの物語。賄賂漬けになっていた警察署。犯罪を見逃す。マフィアの手先になりショバ代を取りに行く。麻薬の密売。そんな中、1人だけ賄賂を受け取らなかったのが刑事セルピコ。でも、仲間の不正を告発はしない。見て見ぬ振りをしていた。

先の地方の構図と近いものがある。悪いのは分かっている。それに加担はしたくない。でも、注意はしない。改善しようともしない。波風を起こさずにいたい。トラブルや事件を見て見ぬ振り。セルピコは狭い警察署という世界で生きている。余計なことをすると周りが全て敵になる。村八分にされる。だから何もしない。ここも同じ。

しかし、セルピコは決意して、悪事を告発する。それから同僚警官たちから敵対され、命の危険にさらされるという展開なのだが、地域社会でも同じことになるはずだ。B君が映画を撮った町。腐敗している訳ではないが、誰かがトラブルを起こしても、問題を起こしても、見て見ぬ振りをするのは、やはり狭い世界で顔突き合わせてやっていかないとならないからだ。

ただ、気の毒のはB君。熱い男で「この街で死んでもいい!」と思って頑張っていた。「いい人ばかりだし、街も美しい。引退したらこの街で暮らそうとさえ考えた」という。でも、その事件後も、

「B君はあんなに頑張ったんだから、ギャラ払わないなんて酷いよね」

という人はいなかった。誰もが無言だったことがショックだったという。彼は都会育ち。田舎のその種の習慣に馴染みがない。裏切れた気持ちになった。多くのメンバーは彼に感謝していたが、最後まで口にしなかったという。土建屋オヤジと揉めたくなかったかららしい。真面目なB君は

「街は美しいが、市民は信用できない。もう、あの町で映画を撮ることはないです.....」

話はここで終わりではない。僕が興味を持ったのはこの後。この街の人たちの考え方は特別ではない。それは日本全体、日本人全体と共通すると言えるのではないか? 福島で原発事故。多くの人が「気の毒」と思うが、ほとんどは何もしない。何も言わない。沖縄の基地問題。「大変だね」と感じるが、多くが何もしない。知ろうともしない。

もちろん、原発に反対してデモする人たちもいる。沖縄まで座り込みに行く人たちもいる。でも、極々一部。ほとんどは沖縄の実状も知らず。福島の悲劇を知りながら、原発反対と声に出さない。政府に不満を持ちながら、政治家たちが不正をしているのを知りながら、選挙には行かない。知らない振り。解決しよう。原因を探ろうとはしない。

政治家の問題報道より芸能人のスキャンダルを知りたがる。先に紹介した田舎の人々と同じではないか? 狭い地域での話ではなく、日本全体の話だ。ただ、日本も狭い。日本というのは大きな田舎社会なのかもしれない。だから、皆、見て見ぬ振り。事実を告げると「デマ」「偏向報道」と批判する。やはり同じではないか?


沖縄戦ビジュアル(宣伝用.jpg
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