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プロになれなかった劇団員ー俳優の立場を逸脱。勘違いでチャンスをなくす。−11月29日 [「沖縄狂想曲」]

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僕が映画監督業をスタートする前。デビュー作に出てほしい素人の俳優さんがいた。劇団で芝居をしている人だ。なかなか個性的。ある役を演じてほしいと思った。

監督デビューが決まり、シナリオを書いた。そこに登場する死神を彼に演じてもらおうと考えた。まだ、正式にキャスティングがスタートする以前。彼に相談した。喜んで引きつけてくれると思ったが、難色を示された。

僕が書いた死神役は西洋風の出立ち。イラスト等でよく見るタイプ。だが、彼はシナリオを読む前、話を聞いただけでこう言いだした。「ここは日本だから、西洋風はおかしい」いやいや、キャラ作りを一緒にしようと言うのではない。その西洋風の死神を、演じてほしいのだ。

さらに彼は「日本風の死神にキャラを直さなければ、出演は?だな」とまで言い出す。そんな高飛車な態度を取る人ではなかったのだが?何より、すでに完成した脚本をプロでもない、素人俳優がキャラを直せと言うのだ。

真面目で謙虚だった彼。なぜ、プロの俳優でも言わない、横暴なことを突然に言い出したのか? 思い出す話があった。彼が出演したある舞台。テレビ局のPが見て「君。なかなか良かったよ」と褒められたらしい。それから「俺はプロに認められた!」と言い出したらしい。

で、彼は勘違い。依頼された役を「俺の希望通りに直さないと、出演しない」と言い出した。しかし、そんな横暴なことを言う俳優。いや、まだプロでもない人を現場に呼ぶと、必ずトラブルになる。彼の出演は諦めた。

その後、映画が正式にスタート。その役は有名劇団の俳優さんが演じ、素晴らしい演技を見せてくれる。その後も数本の映画に出てもらった。一方、先の彼はやがて劇団を解散。本来の仕事であったカタギの仕事を続け、結局プロ・デビューはしなかった。その後、あるベテラン俳優から聞いた。

「プロの俳優がシナリオを直せと主張?とんでもない!与えられた役で、いかに素晴らしい芝居を見せるか?それがプロの俳優だ」

なるほど、彼がプロになれなかった理由も分かる。やはり、厳しい世界なのである。












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