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経験や知識がないからこそ、できることがある=若い人にはそんな可能性がある? [MyOpinion]

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経験や知識がないからこそ、できることがある=若い人にはそんな可能性がある?

「ドキュメンタリー沖縄戦」の取材をしていて強く印象に残ったことがある。沖縄戦を研究する専門家がいる。業界では若手だが、50代。お話がとても分かりやすく、勉強になった。でも、こう言われることがあるらしい。高齢の方から「戦争を体験していないくせに、あれこれ偉そうにいうな!」彼は戦後生まれ、戦争を体験している訳がない。

高齢の方は戦争を体験。様々な苦労をしている。そんな経験もないのに学問として知識だけで、あれこれ戦争について語る彼が許せなかったのだろう。でも、彼はいう。「戦争を体験している人に、経験値では敵いません。でも、戦後生まれで、戦争体験がないからこそできることもあるんです」その言葉には強い感銘を受けた。

沖縄に関わらず、戦争体験者の話や手記はあれこれ調べた。どれも悲しみを伝える貴重なものである。でも、中にはあまりにも苦労したことで現実を歪んで捉える。憎しみで冷静さを失ったものもある。また、当時を美化したりもしてしまう。当時者としては仕方のない部分でもある。犯罪で家族を殺されれば、犯人を憎み、極刑を要求する。相手の事情を察する余裕はなくなる。同じように戦争を体験した人たちも、全てを冷静に見つめることができないはずだ。

その意味で戦後生まれで彼のような専門家は大切なのだ。戦争を体験していないからこそ、冷静に賢雄することができる。そういう視点を持つことで、戦争を多角的に見て、原因や背景を伝えることができる。戦争の生々しい犠牲や苦しみを実感はしていないが、憎しみや苦労に囚われない見方ができる。彼がいうのはそういう意味だと思えた。

実は僕も「沖縄戦」取材の前に、似たようなことを考えていた。僕は沖縄戦も、沖縄も、ほとんど知識がなかった。観光地としての沖縄にも興味がなかった。沖縄戦はいつか詳しく知りたいと思っていたが、知識はゼロだった。さらに沖縄出身の友達もいない。家族も親戚もいない。全く沖縄とは縁がなかった。安室奈美恵やスピードのファンでもない。唯一、「ウルトラマン」の脚本家、金城哲夫が沖縄の人ということくらいしか知らなかった。

そんな輩が沖縄戦の取材をしていいのか?と思えた。が、取材をしていて分かったこと。多くの日本人が沖縄戦を知らないということ。それならば、僕はその代表としてゼロから沖縄戦を学ぶ。その記録をドキュメンタリーにすれば、誰もに分かりやすい作品になる。下手に知識があると「このくらい分かるだろう」と省略したり、「ここはしっかり伝えねば」と難しい題材を深々と描き、一般の人の興味を失う作品になるかもしれない。実際、沖縄戦のドキュメンタリーは専門的なものが多く。意外に一般向け。初心者向けというものがないこと。後で地元の方に教えてもらった。

つまり、沖縄に何の縁もなく、沖縄戦を何も知らない僕のようなものが作ったことで、初心者にもよく分かる作品ができたのだ。また、本来はエンタテイメン映画の監督。その意味で退屈しないで、興味を持って作品を見られるスタイルとなり。退屈と言われがちな昔ながらのドキュメンタリーにならなかったという側面もある。だが、最初は不安で、僕なんかでいいのか?という思いもあった。そんな中で支えになったのが先の若き専門家さんの言葉だ。それはいろんなことに当てはまる。

よく「経験がないから」と若い人は言われるが、経験がないからできることもある。大人は経験があるから、「これは無理」「前例がない」「やめておこう」となりがち。経験がない若い人は恐れを知らず挑む。だから実現できることがある。経験や知識は必ずしもプラスにはならない。何もないことが可能性を生むのだ。沖縄戦取材で、そんなことも痛感した。


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