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ベテランのスタッフさんが亡くなった。 [映画業界物語]

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 以前、ご一緒したベテランスタッフさんが亡くなった。

 僕より10歳近く上なので、70歳前後。昨年は同世代が3人も亡くなったので

 自分より上の世代が亡くなるのも、時代の流れとも思える。

 彼は映画屋らしく、酒が好きで、浴びるほど飲んでいた。

 撮影時でも飲みすぎて、低迷状態で宿に戻ってくることもあった。

 結婚もしておらず、職人気質。現場の人だった。

 最近はどうしているのか?と映画界で回ってくる「スタッフ稼働表」を見ても名前がない。

 僕もこの10年ほど忙殺されていて、誰かを心配する余裕すらなく、

 同じ映画界。どこかでまた出会うだろう。と、戦場をさまよう者のように思えていた。

 実際、親しい友人に電話する余裕もなく、同級生が入院。訪ねることもできなかった。

 1本の映画が始まるとまさに戦争。全ての余裕を失う。終わると数ヶ月で過労でダウン。

 何もできなくなる。毎回、過労死してもおかしくない状態。

 映画撮影は過酷だ。そんな彼が報道の取材スタッフをやっていると聞いた。

 体が悪いので、長丁場のドラマではなく、単発で働ける取材の技術スタッフをやっているだろうと想像する。

 そして、ある日の撮影に彼が来なかった。心配でスタッフが自宅に行くと、室内で倒れているのが発見。すでに亡くなっていたという。

 葬式もすでに済んだそうだ。連絡をくれたスタッフが「しのぶ会」でもしたいが、コロナ禍で緊急事態宣言も延長と言われている。そんな中で会もできない。

 昨年、亡くなった師匠の「お別れ会」もいまだに出来ておらず、1年が経とうとしている。次は僕の番かもしれない。映画屋の末路は寂しいものがある。



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