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映画監督業。日頃はこんなこと考えている? [映画業界物語]

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時間があるとストーリーを考える。観客を魅了し、ハラハラドキドキして、感動できる物語を常に探している。新宿の高層ビル街を歩いていて、窓拭き掃除をしている人を見たら、その職業を主人公とした映画ができないか?考える。高いビルで窓拭き。いろんな苦労があるだろう。主人公は高所恐怖症というのはどうか?あれこれ考える。

が、素晴らしい物語は簡単には思いつかない。あれこれ何日か考えて、結局ものにならないことがほとんどだが、その間、飯を食う時も、風呂に入る時も、街を歩くときも、その物語を考え続ける。赤信号に気づかず、クラクションを鳴らされたこともある。部屋で考えれば良さそうなものだが、歩くことで脳が活性化される。また、外を歩くことで看板や通行人。建物。いろんなものを見るので、そこからアイディアが閃くこともある。

映画を見るのも大事。全然違うジャンルの映画でも、ある場面で、あるキャラのセリフが大きなヒントになることがある。ある先輩はホラー映画を撮る前はコメディばかり見るという。「笑い」と「恐怖」は表裏一杯なのだそうだ。分かるところがある。そんな風にどこにヒントがあるか分からないので、街をうろつく、いろんな映画を見る。仕事依頼がなくても、そんな作業を続ける。

そして考えだすと、他のことが手に付かない。食事もどうでも良くなる。風呂に入るのを忘れたり。そんな時に約束をするとまずい。さすがにそれも忘れてということはないが、そうなるとストーリー作りに集中できない。物語の世界に入れない。そんな時は予定を入れない。そしてあちこち歩き回る。

もし、そんな姿を見ているカタギの人がいれば、どう思うか?こう言われたことがある。「映画監督っていつもブラブラ、遊んでばかりいるんだって?」確かに行動だけ見ればそうだ。だが、考える。想像する作業ー映画屋にとって仕事。なのだが、カタギの人にとって「仕事」というと会社に行き、デスクに向かうこと。工場で作業することなのだ。街を歩くのはまさにブラブラしている。仕事をせずに遊んでいるとしか思えない。

映画の仕事というのは理解されにくいもの。その誤解によって、あれこれ批判しに来る人。良からぬ噂を吹聴する人。時には「お前、いい加減。遊んでばかりおらずに、真面目に働けよ」と説教する人たちもいる。彼ら彼女らからすると見かねての行動なのだが、大きなお世話であり、そんな人たちを傷つけずに理解させ、放って置いてもらうために使う時間や労力が必要となる。その上、説明しても理解されず「お前は仕事をしたくないだけだ!」「言い訳はするな!」「要は怠け者なんだよ」「心を入れ替えろ!」とか怒り出すことが多かった。

近年はそこそこ知名度のある作品を監督しているし、有名俳優も出演してくれるので、理解されるようになってきた。そこから感じたこと。人は本当に自分を取り巻く価値観が絶対的なものになってしまい、「それを大切にしない者は問題がある。無知である」と考える。「教えてやらねば!厳しく指導せねば!」そしてあれこれ言いに来る。本人は良かれと思うが、こちらは迷惑なだけ。

これはアメリカ人に住むアメリカ人が、自宅に入るときに靴を脱がないのを見て「あいつら本当に常識がない。家に入る時は靴脱ぐのは当然だ。そんなこともわからないのか?説教してやる」というようなもの。そこに気づかない人が意外に多い。日本人は狭い島国で育ち、同じ日本人と付き合うことが多く、価値観も狭くなりがち。難しいなあ。


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