「ウルトラセブン」脚本家・金城哲夫が最終回に託した沖縄戦の思いとは何か?⑥ー終 [戦争について]
こうして見ると、『史上最大の侵略』はまさに沖縄戦の意味を問う物語だと思える。実はそれと同じテーマで描かれた『ウルトラ』シリーズがもう1本ある。『帰って来たウルトラマン』の『二大怪獣 東京を襲撃』だ。物語を紹介する東京に現れた怪獣ツインテールのために坂田アキ=主人公・郷秀樹の恋人=が地下に閉じ込められる。
にも関わらず、MATの長官はスパイナーを使い、怪獣を倒せと命じる。そのことで地下にいるアキたちが犠牲になるかもしれない。これも同じ。多くの東京都民を救うためなら、少数が犠牲になってもいいという発想。ウルトラマン=郷秀樹は反対し、MATを辞めてアキを救おうとする。これもアマギ隊員を助けようとしたモロボシ・ダンと同じ思い。
結局、長官の命令を無視して加藤隊長は救出を優先。これも同じ。先のキリヤマ隊長の最後の思いを実践している。こちらにも「沖縄戦」がダブる。調べると、脚本は上原正三。金城の後輩であり、同じ沖縄出身。金城の『史上最大の侵略』に対して、上原が「沖縄戦」への思いを込めたエピソードなのだと思える。先に紹介した薩摩次郎が登場する「地底へGO!GO!GO!」も彼の脚本だ。
そして興味深いのは、両作品で「犠牲やむなし」と命令を下すのは藤田進演じる長官。藤田は戦争映画で何度も日本軍の将校を演じた俳優。彼が二度もまでも長官を演じ、犠牲を強要したのは『史上最大の侵略』も『二大怪獣 東京を襲撃』も、日本軍と沖縄の関係を描いたものだからと思える。
ちなみに、僕が一番好きな『ウルトラ』シリーズがその2本。どちらも繰り返し見ている。そんな僕が「沖縄戦」のドキュメンタリーを監督することになるのも何か、運命的なものを感じる。何しろ、沖縄関連で子供の頃から知っていたのは「金城哲夫」と「上原正三」という名前だけだった。
初めて『セブン』を見てから50年ほど。ようやく彼らが物語に託したものを見つけることができた。その意味でも『ドキュメンタリー沖縄戦』を作れたことに感謝。沖縄完成披露試写会のとき。地元にある金城哲夫資料館を訪ねた時は感無量だった。僕の本来の仕事である劇映画の方で、そんな金城哲夫や上原正三の「思い」を継いだ作品。作って行きたい。(了)
●「ドキュメンタリー沖縄戦」は東京 大塚シネマハウスで今週末まで再上映中です。
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