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個人の幸せより、人をハッピーにすることを選ぶ。それが映画監督業の定め?< [映画業界物語]

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個人の幸せより、人をハッピーにすることを選ぶ。それが映画監督業の定め?

最近はもう「監督は何で結婚しないんですか?」とも聞かれなくなった。60代も近いので流石に聞く人はいないのだろう。聞かれた時は面倒臭いので「モテなかったから」というが、同世代の友人で、モテて、収入も安定しても、結婚していない奴らが何人もいる。

それぞれに理由があるのだろうが、僕らの世代は変わり者が多いのかもしれない。不況が続き、結婚できないという話も聞くが、映画界の後輩たちは結構、結婚、一児の父であることが多い。太田組演出部では一番若いサード君でさえ、3児の父だ。ある意味で羨ましい。が、もし、自分が結婚していたら...と考えると難しいものがある。

奥さんがどういう人か?という問題もあるが、映画監督業は家庭を優先が出来ない。家庭どころか芸能界は親の死に目に会えない仕事。プライベートを犠牲にしてかからねばならない。何より月給がもらえるわけではない。生活は安定しない。1年働いてギャラなしということもある。子供がいれば来月の給食代どうする?ということになる。僕の場合。仕事はそこそこしているが、低予算映画が多いのでギャラは低い。

そのギャラでさえ、製作費として注ぎ込んでしまうことがよくある。ここで音楽は第1線のあの人にやってもらいたい。あの機材を使えばもっと良くなる。当然、費用がかかる。それを自分で出してしまう。でも、もし、愛する妻がいたら、子供がいたら。たまには子供たちを外食も連れて行きたいとか、妻に誕生日プレゼントを買ってやりたいと思う。そうしたら少ないギャラをより減らすようなことはできなくなる。

でも、映画のクオリティが下がる。それでなくても低予算。いいものを作れない。もし、会社員なら何とかなる。1人が手抜きしたからと会社自体に大きな影響は出ない。有給を使って旅行に行ったからと会社が倒産することはない。が、個人商店と同様に映画監督業はモロに影響する。いい映画を作るか? 家族を大切にするか? 

昔の監督はかなりの給与を映画会社からもらっていたので、そんな心配はいらなかった。だから女優とも結婚できた。が、今では映画監督業で食えているのは日本で数人と言われる。

「だったら、しっかり稼ぐ女性と結婚すればいいじゃない?」

と以前はよく言われた。そうすれば映画に専念できる。が、別の問題がある。映画業界は理解されにくい。3年間休みなし!ということもある。家族サービスができない。子供の運動会にも行けない。家に帰っても映画のことを考え続ける。なのに外では綺麗な女優さんと毎日仕事している。そんな夫を妻は信じ続けることができるか? 

また、監督業は無理が多いので健康を損なうことがある。過労死した後輩や現場ができなくなった先輩もいる。退職金も年金ももらえない。それらを全て理解する女性ってなかなかいないだろう。これはもう愛だけでは無理で、やはり映画業界という仕事を知っている人でないとダメ。憧れだけで「映画監督ってカッコいい」と思うタイプではうまく行かない。

ま、妻も大変だが、監督業の夫も大変。そんな不満を日々、ぶつけられたら仕事に集中できない。何より夫としての責任を果たせないことが多いので、文句を言われても当然。で、結局、離婚。やはり、結婚は無理だったんだなあ。と今更ながら考えてしまう。監督業辞めて幸せな結婚生活をするか? 個人の幸せを諦めて、人をハッピーになれる映画を作るか? 監督業はそんな選択をせねばならないのだろう。


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