沖縄戦ドキュメンタリー進行報告。ブラック企業で行こう!? [映画業界物語]
沖縄戦ドキュメンタリー進行報告。ブラック企業で行こう!?
沖縄地図をタイムラインに入れた。そこに矢印、星条旗、地名を入れて、それぞれの戦闘がどこで行われ、アメリカ軍はどのように進撃して行ったか?を示す映像を作る。前回も書いたが本来は、専門業者に出す仕事。監督の範疇ではない。が、取材に費用をなるべくかけたかったので、それ以外は僕自身が対応して費用をかけないという方針出来た。
「最近の映画は低予算が多いから、監督さんが何人分も働き大変ですね〜」
と思う方もいるだろう。でも、現実はそうでもない。というのは、もともと監督というのは文句を言うだけで自分では何もできない職業。カメラも回せない。照明機材も扱えない。マイクも持てない。編集もできない。でも、だから、自由な発想であれこれ言えるし、技術部に精通していないから無茶も言える。ただ、その場合はPからこう言われがち。
「監督。もう製作費がないので、この作業はなしということで...」
例えば作品内で提示される地図はなし!とかいうことになる。だって、金がなければ作業を頼めない。Pや監督がタダ働きするとしても、機材を使いこなせない。だから、カット。費用がないから! 他にも
●音楽は安い新人に頼む=>当然、クオリティ低い!
●費用がないから編集は1ヶ月で!=>当然、安易な編集しかできない。
「それなら、せめて編集は俺が!」
黒澤明監督も、大林宣彦監督もご自身が編集する。ところが多くの監督は自身で編集できない。センスや技術だけでなく、今はパソコン編集なのでソフトを使いこなせないとダメ。若い監督ならできるのだろうが、僕の同世代で知る限り、できるは僕と、あと1人2人いるかどうか? 皆、スタッフを雇って作業させる。当然、人件費がかかる。
こうやって作品レベルが低くなり、安かろう悪かろうというものが出来上がる。でも、それが予算に見合ったレベルなのだ。沖縄戦のドキュメンタリー(NHK以外で)ずば抜けたものがないのは、そもそも爆発的には売れないであろう作品に多額の費用はかけられず、その費用ではクオリティの低いものしかできない。だから余計に見る人も減る。
ただ、僕の場合はもともと自主映画をやっていて、1人で全部やっていた。シナリオ、監督、撮影、編集と、やっていた。その流れで監督デビュー以前から編集ソフトを使っていた。さほど器用ではないが、自分の仕事以外のパートもやってみたい。
映画の時も小道具探しとか本来、美術部や演出部がやる仕事もやる。特殊なもの。中古レコードとか昔の雑誌を探すのなら、僕の方が早い。撮影現場でもカメラマンは2人。カメラを3台回さねばならない時は僕も回す。
そんなことで器用貧乏。でも、そのことで7倍働けば人件費が節約できる。2倍近い費用で作品を作っていることになる。だから「予算の都合で地図はカット!」とか「音楽は安い新人に」「編集は1ヶ月で済ませる」というクオリティ低下に繋がる対処をしなくてもいい。
これ言い換えれば、ブラック企業が人件費を抑えて社員を必要以上に働かせることで赤字にならず、業績を維持しているのと、同じなのだが、僕の場合はそれを望んでやっている訳だ。でも、その方法論はいつまでも続けられない。年齢の問題で無理が利かなくなってくる。体力の問題もある。生活もある。しかし、行けるかところまで行ってみたい。
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