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ドキュメンタリー映画の大変さ。劇映画より苦労が多いこと。なかなか想像できない? [映画業界物語]

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ドキュメンタリー映画の大変さ。劇映画より苦労が多いこと。なかなか想像できない?

劇映画も大変だが、ドキュメンタリーは別の意味で大変だ。というと友人にこう言われた。

「映画は俳優が出演するので、高いギャラを払わなければならないけど、ドキュメンタリーは俳優が出ないので安く済んでいいよね? 今回は楽だっただろ?」

素人目にはそう思えるのだろう。でも、それは違う。劇映画よりむしろドキュメンタリーの方が大変なのだ。

劇映画ではスケジュールを決めて、連絡しておけば、俳優はその日に必ず現場に来てくれる。遅刻したり、ましてドタキャンしたりはしない。それがプロなのだ。ところが、ドキュメンタリーの場合は一般の方にインタビューする。1ヶ月も前からアポを取り、何度も連絡しているのに、自宅を訪ねる日になって

「今日は急に都合悪くなったので、他の日にお願いします!」

と連絡が来ることがある。取材は1週間。他の日は他のインタビュー。時間はない。それでも相手の好意で取材させてもらうので、やりくりする。それはいい方で、「来週なら大丈夫です!」なんて当時に言ってくる。来週はもう帰京している。

こちらは東京から取材に行ってることご存知なのに、なぜかお友達感覚で「今日はちょっと〜」と言う人がいる。その人のスケジュールに合わせて、その週に取材を決め、他の方々にもその週で予定を取ってもらう。無理をお願いすることもある。なのに、一番メインの人がそんなことを言い出すことがある。

それが2人ドタキャンされたら、もう大変。その2人合わせで現地に来ているのに、その2人がダメなら何をしに行ったか?分からなくなる。飛行機代、スタッフのギャラ。機材。レンタカー代。宿泊費と、それらの費用が全て無駄になることもある。

最初の段階なら、インタビューがダメでも、風景撮りとか、その他の取材をすることができるが、最終段階でそれをされると致命的。下手すると100万くらいが飛んでしまう。また、取材をお願いしても

「先日、NHKでも取材を受けたので、その映像を借りてください!」

と言う方もいる。が、それは出来ない。NHKが取材したものはNHKが著作権を持つので、本人の同意があっても使用は出来ない。が、そんな業界の事情は一般の方には分からない。その辺の説明からしなくてはいけない。また、

「忙しいので、喫茶店でなら会えますよ」

と言われることもある。これもダメ。喫茶店でインタビューは出来ない。雑誌の取材ならいいが、撮影する場合は、音が問題。周りの客の話し声、店のBGM。撮影が出来ない。当日になって、

「やっぱりヤメた!話さない!」

と言う人もいる。或いは何度も何度もお訪ねして、お土産を持って行き、交渉を進めても、最終的に断られることもある。もちろん先方にも事情があるので、断られるのは仕方がない。でも、その交渉にかけた時間。費用。労力は全て無駄になる。

そんなことで取材経費がどんどんなくなる。取材ができて経費を使うならいいが、経費は使うが取材は出来ないと言うことが続くこともある。期待して取材したけど、期待はずれのお話しか聞けないこともある。そんなことで経費がなくなり、仕上げ段階で予算が苦しくなる。

安いスタジオを探し、新人でギャラの安い効果さんを探し、音楽やナレーションも上手くないけど、安い人にお願いせねばならない。いくらいい取材ができていても、それではそれなりの作品になってしまう。が、誰も恨むことは出来ない。

取材を拒否した人が悪いか?

と言うと、その人なりの事情がある。ドタキャンした人は悪いが、そのために50万〜100万と言う経費が無駄になるとは想像しない。製作会社もだからと言って追加予算は絶対に出さない。ドタキャンだけでなく、台風や事故で現地に行ったが、撮影できなかった....と言うこともある。

でも、それがドキュメンタリーなのだ。その意味で今回はリサーチ&連絡係をした担当者が本当によくやってくれた。ドタキャンや取材拒否もあったが、いろんな人を探し出してくれた。もし、プロのリサーチャーを雇っていれば、それでまたかなりの人件費が必要だった。カメラマンやスタッフも本当に頑張ってくれた。某NHKが同じレベルの作品を作れば、今回の3倍の費用がかかったはず。本当にドキュメンタリー映画はつらい!



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