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ドキュメンタリー編集の大事な点。思いの全てを叩き込んではいけない? [編集作業]

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ドキュメンタリー編集の大事な点。思いの全てを叩き込んではいけない?

こんな時間に記事を書くのはめずらしいが、頭を整理したいので書いている。本日の編集は「証言」ではなく全体を縮める作業にした。エンディングのエピソードを4分ほどにせねばならないのに、昨日の段階では25分もあった。それを徹底してカット。10分にまでした。短くなるのはいいことだが、そのことで大事なものが抜け落ちてしまうことがある。

A、B、C、Dというカットがあって短くするためにBとCを切った。長さは半分になるが、そのことで感動が失われることがある。と言って、切らないわけにはいかない。そこで大事なのは、どのカットに感動を伝える働きがあるか? を分析、把握すること。同時に、特定のカットではなく、このABCDという並びに感動を呼ぶ力がある場合もある。

或いは、AとDは余計で、BとCのみが力を持っていることもある。いろんなパターンがあるので、それを見抜かなければならない。その上で、AとBは切れると判断。短縮する。これを無神経な編集者は「面倒なので、CDをまとめて切ろう。その方が切りやすいし」とか思ってカット。台無しにしてしまう。

そこはセンスと感覚。それでいて理論なのだ。だから、本当に編集だけは、センスがない奴がやってはいけない。そして、経験がない奴があれこれ言ってはいけない。まあ、たいてい余計なことを言い出すのはPなのだが、ロクなものにはならない。そんなことを考えながらカットを続ける。

いくら早くできるからと、5分バサッと切るのもアウト。3秒とか、5秒のなくてもいいカットを探し出して切らねばならない。そうやって午前中から作業。先週まで6時間あった尺が、なんと3時間35分に! これなら2時間にできる。頑張れば1時間40分ほどか? 

本日は何でカット作業をしているか?というと、全体の流れを掴みたかったというのがある。全体のイメージ。方向性はすでに把握しているが、テンポや流れ、リズムがまだ分からない。まだ30秒以上のカットが存在する。それを巡行速度で見るとテンポが悪い。

当然だ。1カットを3〜8秒。長いものでも15秒くらいにすると、見やすくなり、リズムとテンポが生まれる。それが分かれば、作品の全貌がさらに想像しやすくなる。もう一つは、尺を把握することで、持ち込めないエピソードと残さねばならないエピソードを決められる。

沖縄戦は本当に多岐に渡り、軍事、民間、社会、政治、日米、いろんな面で語ることができる。すでに取材し、映像があるものの中で、これはぜひ見せたい!と思っても、そのことで尺が2時間超えになると考えねばならない。劇映画の場合。僕の作品はほとんど2時間越えだが、それでも退屈せずに見せる公算がある。

が、ドキュメンタリーはそうもいかない。題材に興味がない人でも退屈せずに見れる時間というのは大事だ。それを作家は「いや、これは伝えたい!」「これも伝えねば!」「これは外せない!」との思いが強いので、いろんなものを持ち込んでしまう。結果、観客が退屈する作品になりがち。

劇映画でもディレクターズカットといって3時間近い版が出ることがあるが、見ると要らないものが多く、結果、オリジナル版の方がいい場合がある。(会社の圧力で無理やり切られ、短くされた不遇の作品の場合は別だが)つまり、作家は思い入れが強く、こだわりがあるからそうなるのだが、観客にその全ては伝わらない。

それを伝えるにはまた別の技術が必要。だが、監督には純粋な人が多く、ストレートに全部入れ込んで作品をただただ長いものにしがち。そこを冷静に見極めるのも編集の仕事なのだ。それでいうと、今回、すでに粗編集して、ラインにも乗せてある「米軍の墓参り」?とか「上陸作戦前の住民生活」とか、描きたいエピソードをカットせねばならないだろう。

とりあえず、スリム化して、それでも余裕あるようなら、戻すという形を取る。通常は全部作り上げてから、尺を考えて後でカットするという、面倒で勿体無いやり方をするが、今回は3ヶ月の作業を2ヶ月でする。進めるだけ進めて、余裕あれば追加という方法を取る。注意すべきは、強い思いを全て持ち込まないことだ。大切なことは何か? その選択が大事だ。


沖縄戦ビジュアル(宣伝用.jpg
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