「ブルークリスマス」凄かった！コロナ感染と「沖縄戦」がダブる。類を見ない日本のSF映画。でも、SFじゃない？

「スターウォーズ」１作目（エピソード４）公開の翌年1978年に公開された東宝映画。特撮を一切使わないSFドラマ。だが、全然ヒットせず、友人関係で見た者はいない。それもあってか、ビデオソフト時代の初期（紙ケースの頃）にリリースされたのみ、大型ビデオレンタル店時代には手に入らない状態が２0年近く。DVD化もかなり遅かった。

僕は幸い、近所にあった老舗のようなビデオ店で、90年代に紙パックのVHSを借りて見た。が、かなりシュールな作品だった。それから15年くらいが経ち、「沖縄戦」から始まりヒトラーの勉強をしていて、ふと思い出したのが、この映画。何と言ってもこの映画、監督は岡本喜八、脚本が倉本聡だ。この組み合わせ、どう考えるか？

「日本のいちばん長い日」vs「北の国から」だ。それでSFって、どちらも違うだろ？と思えたが、「沖縄戦」取材時に繰り返し見た「沖縄決戦」も岡本喜八監督。何かあるはず。という思いをありDVDを探した。amazonで中古品を購入も出来たが、amazonプライムでも見れることが分かる。高画質５00円。標準４００円。４８時間視聴可能。これで行こう！

10数年前に見たので、細かいディテールは覚えていなかった。が、基本的な流れは分かっている。ただ、前回とは違うものいろいろ見えて来る。よく70年代にこんな製作費がかかるリアルなSF映画を作ったものだと感心する。俳優陣が皆渋い。仲代達矢、小沢栄太郎、大滝秀治、天本英夫、岸田森、八千草薫、高橋悦史、田中邦衛、と社会派ドラマのような顔ぶれ。ま、メインは勝野洋、竹下景子なのだが、軍や放送局の描き方がSF映画ではない。東宝映画だが「ゴジラ」というより「日本沈没」だ。

さて、内容だが、世界に飛来するUFOというと「未知との遭遇」をイメージしそうだが、全然違う。そのUFOと遭遇した人たち、皆、血が青くなる。他は何も変わらないのだが、それを政府は危惧。別の理由を挙げて国民一斉検査を行い、血が青い人たちを隔離する。なんだか今のコロナ感染を思わせる。隔離された人たちは密かにアメリカに輸送され、人体実験が行われる。

しかし、政府があえて見逃している青い血の人たちもいた。その彼らに反逆罪と汚名を着せて、自衛隊に抹殺させるという計画を立てる。その特殊部隊の隊員が勝野洋。その恋人が竹下景子。そして彼女こそが、あえて見逃されていた青い血の女性。イメージを伝えるために、似たような映画を上げたいが思いつかない。舞台は現代。1978年当時。これが未来の話ならまだ分かるが、現在も現代。近未来という設定ですらない。この記事につけた映画のポスターからも内容は全く伝わらない。

岡本喜八監督は戦争に強い関心がある。コメディタッチの映画も多いが「沖縄決戦」「日本のいちばん長い日」は超シリアス。「沖縄戦」は怨念さえ感じる。そこから考えるに、この映画「ブルークリスマス」はアウシュビッツの惨劇を描こうとしたのではないか？　ナチスがユダヤ民族を迫害、抹殺しようとしたように、血が青いというだけで差別し、危険視して抹殺する。あるいは「沖縄決戦」で描いた軍が沖縄県民を差別し、見捨てたのと同じ構図を伝えたかったのかもしれない。

ユダヤ人や沖縄県民だと他人事に映るが、現代の東京を舞台に描けば小さな違いで差別する残虐性、愚かさがよりリアルに伝わるのではないか？と岡本監督は考えたのだと思える。ただ、脚本を書いた倉本聰は何を思い、この物語を書いたのか？完全オリジナルシナリオ。原作はない。彼の代表作「北の国から」「昨日、悲別で」「ライスカレー」「君は海を見たか」等を思い出してもダブるものがまるでない。

ただ、彼も黒澤が映画化した山本周五郎の「赤ひげ」をNHKでドラマ化しており、それを見た黒澤が驚愕したという話も聞く。確かにあのドラマは凄かった（アーカイブはないようだ。当時のNHKは昔のドラマを放送後に消していた！ーちなみにこの映画で描かれる放送局はNHKをモデルにしている。肝心なことを放送せず隠蔽に関わるあたり、まさに今のNHKだ）そこからして、迫害される人間に対する思いを描くドラマを実は書きたかったのではないか？　でも、７０年代当時に、在日問題、沖縄問題を正面から描いても映画化が難しい現実があっただろう。そこで「スターウォーズ」ヒットを利用してSFで描いた？

そんな気がしている。しかし、岡本喜八監督。「沖縄決戦」を始め、この数年、あれこれ彼の作品と出会う。これを機会に調べて見たい。「エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督が彼の大ファンで、「沖縄決戦」の影響が「エヴァ」にも随所見られる。あ「シンゴジラ」にもね。よし、岡本喜八を勉強するぞ！