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映画監督に大切なもの。演出力だけでない。映画以外の体験。そして豊富な知識?=映画ファンでいてはダメな理由 [映画業界物語]

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映画監督に大切なもの。演出力だけでない。映画以外の体験。そして豊富な知識?=映画ファンでいてはダメな理由

1980年代前半。学生映画をやっていた。皆、プロを目指していた。「1億円出してくれれば、スゲー映画作ってやるのによ〜」という豪語する友人も多かった。もちろん、そんな気前のいい映画会社はない。仲間たちは業界に認められようと8ミリフィルムで映画を作った。「早くプロになりたい!」そして気分はもう巨匠という友人もいた。

僕も似たようなものだったが、気になっていたことがある。作った作品は皆、高校時代の経験をベースにしたもの。でも、たった3年間の経験。使えるカードは多くない。それらをシナリオにして学生映画にした。3本も撮ると在庫が僅かになる。似たようなものなら、いくらでも作れる。が、それではいけない。当時人気のスピルバーグは「激突」でデビュー。「ジョーズ」「未知との遭遇」「1941」「レイダーズ」「ET」....テイストは近いが、全部別の物語。

僕も高校時代の想い出以外のシナリオを描こうとしたが、ダメ。知らないこと。経験していないことは物語できない。無理やりシナリオにしても面白くない。いろいろ研究すると、漫画家の本宮ひろ志がこんなことを言っていた。「最初は自分の経験をもとに物語を作る。実力がついたら、調べて書く。その先は別の何が生まれてくるんだよ」最初の部分は痛感。経験もないのに「刑事物」を書いても説得力ゼロなのだ。

本宮は河原で喧嘩する少年時代。だから「男一匹ガキ大将」が描けた。その後は「俺の空」「男樹」「サラリーマン金太郎」と自分のスタイルに加え、あれこれ調べて漫画を描き続けた。が、友人たちはいう。「才能があれば大丈夫だ。プロに入っても通用する!」だが、当時から僕は「才能」なんてあるのか?と思えていた。(今は言える。ありません!)

プロで映画が撮れたとして1年に1本。黒澤明と同じ80歳まで取り続けると60本!特に僕は自分でオリジナルシナリオを書きたい!という思いがあった。1本2本なら、自信はある。が、60本も水準以上の作品を作ることができるのか? 若さゆえの過ちで「やれる!」と思い込むのは簡単だが、ダメだろう。本宮ひろ志も言っているが「俺の漫画を読んでファンになり、弟子入りしてくる奴がいる。絵もうまい。が、何の経験もない。漫画読むだけで生きてきたやつに作品は作れないんだ」と。同じように多くの映画を見ているだけではダメ。映画以外を知らないと映画を作れない。

次々に同世代がプロデビューしていく中で、僕は遠回りを選んだ。(プロのチャンスなんてなかったのだけど)アメリカ留学である。その後の話は以前に何度も書いたので、話は現代に飛ぶ。デビューして15年。自作を振り返る。「向日葵の丘」「明日にかける橋」「ストロベリーフィールズ」は経験をもとに書いた物語。取材して書いたのは「青い青い空」「朝日のあたる家」本宮ひろ志が言うように、次のステップである「調べて書くこと」にも踏み込んでいた。

だが、最近になって気づいたこと。作品が決まってから調べたのでは時間がない。「青い青い空」はなかなか撮影に進めず、4年かかったので、その間に勉強した。「朝日」は映画にするつもりではなく、興味で原発事故を2年調べていた。が、次に何か? 野球とかサッカー(スポーツはないと思うが)の依頼が来た時に、そこから勉強したのでは遅い。特に日本映画は「調べなくていいから、早くシナリオをあげてほしい!」とアホなことを言うPが多い。それが諸悪の根源。

と言ってハリウッド並みに3年もシナリオに時間をくれる会社もない。だから、日頃が大事。宮崎駿や富野由悠季が凄いのは(黒澤も同様)すでに膨大な知識があり、そこから作品が生まれてくること。作品のための取材は僅か。2人とも戦争に詳しい。軍事にも詳しい。歴史、文化、風俗、社会、政治など、学者並みに勉強しているに違いない。それが作品に反映されている。「沖縄戦」取材で痛感したのは「ガンダム」の世界観、展開、設定は第二次大戦がベースなのだ。だからリアルであり、説得力がある。

だからと言って若い頃から本ばかり読んで知識をつけても、自身の経験がないと物語は作れない。恋したこともない男がラブストーリーを描けない。喧嘩したことない奴がアクションものを作ることはできない。が、経験は限りがある。次は知識。今、まさに第二次大戦を勉強中。もちろん、学校の授業のように「1941年12月、日本軍はハワイの真珠湾を奇襲した」と事実だけを暗記しても物語は作れない。

戦争の背景、国柄、経緯、等を理解すること。アメリアの視点、日本の視点で見てみる。あるいはヨーロッパ戦線と比較。ドイツと日本を比較することで様々なことが分かって来る。一番、驚いたのはドイツと沖縄の共通点。そのことで物語が作れる。そんなこと、あれこれ感じている。知識の大切さ。この歳になって痛感するとは思わなかった。



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