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「ドキュメンタリー沖縄戦」を作ったことで、あれこれノンフィクションについて考える。 [映画業界物語]

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「ドキュメンタリー沖縄戦」を作ったことで、あれこれノンフィクションについて考える。

いつもは劇映画を作っているが、今回は長編ドキュメンタリー。なのだが、短いのはこれまでも何本もやっている。テレビ・ドキュメンタリーもやった。そもそも、僕の映像作品デビューはメイキング。あれもドキュメンタリーである。師匠・大林宣彦監督の「理由」のメイキングも担当させてもらい、DVDにも収録されている。

ただ、やはり長いものを作ると、いろいろ考える。そのために沖縄戦以外のドキュメンタリー作品も見て勉強した。それで分かったのだけど、例えば深夜や日曜の昼間に放送されるドキュメンタリー番組。地味な題材を長期間取材した優れたものも多いのだが、全体的な傾向を感じる。作り手=監督が取材対象となる人(多くの問題を抱える)に対して同情し、共感していること。

例えば、超極貧の失業中男性のルポ。見ていると本当に気の毒。何とかしてあげたくなる。が、ひたすら同情したくなる日常を描く。失業した理由も分かる。失業手当が打ち切られたのも。職安に通うのも大変。誰か何とかしろよ!と思うのだが、僕は捻くれ者なので、こんなことも考える。「なぜ彼はそうなる前に対策をしなかったか?」「失業した理由も本当に不況によるリストラだけなのか?」でも、その辺は描かれない。突っ込まない。

何年も続く訴訟を取材した作品。大企業を訴える家族。公害訴訟。作品は完全に原告の家族の視点。確かに気の毒。しかし、そもそもの公害問題の説明が足りない。企業側の責任は大きいと思えるが、それだけなのか? 法律、自治体、政府の対策はどうだったのか? そちらにはカメラは向かず、哀れな家族ばかりを追う。この手の作品が多いように思える。番組として考えれば、企業側に同情するものより庶民がかわいそうな方が視聴者は同情。受ける。

だが、それでは時代劇と同じ構図。悪代官とかわいそうな農民。ドキュメンタリーがそれでいいのか? 報道番組でもその手のものが多い。分かりやすい構図に当てはめて、ひたすら同情を誘う。が、背景には深く切り込まない。それをドキュメンタリーと呼んでいいのか? うまく表現できないが「公正であれ」というのではない。被害者の哀れさ。それに同情した監督が描いたのでは本当の意味で、被害者の辛さが伝わらないのではないか?ということ。

監督の立場は被害者を理解しても、あまりにもその立場に近づき過ぎると感情的、情緒的なり、悲しみを伝えることができず。共感を得られないものになりはしないか? ということだ。そんなことを考えている。


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