SSブログ

沖縄の悲しみをどうすれば、自分のこととして考えてもらえるのだろう? [編集作業]


img_96327d03a312ca4c9600a862fae7b289377127.jpg

沖縄の悲しみをどうすれば、自分のこととして考えてもらえるのだろう?

人はなぜ他人の痛みが理解できないのか? 人の悲しみを体感できないのか? 福島の原発事故で痛感した。と言う僕も最初はテレビ報道を信じて、放射能は出ていない(本当は東京にも降り注いでいた!)大きな被害は出ていない。避難した人もいない。大変なのは震災の方だ。と思い込んでいた。

ところが、後になって何万人ものが避難し、家に帰れない人が多いことを知る。だが、それらが報道されるようになっても、多くの人はこういう。

「福島の人たち、気の毒ね〜」

他人事だ。そもそも福島になぜ?原発が作られたか? 東京の電力を賄うためである。東京に作ると危険なので福島に作った。それが事故。東京都民の代わりに福島県民が被害を被った形だ。

それを「気の毒ね〜」「寄り添いたい」と言う東京の人たち。本来なら、都民がえらい事になっていたのだ。それを知らないのは分かる。だが、原発事故の報道を見ても、多くの日本人は「可哀想ねえ〜」と他人事。最近では「もう、事故は終息して、みんな福島に帰ったって聞いているけど。被害が大したことなくて良かったよね?」と言う人もいるようだ。原発事故は終わっていない。

「セシュウムの半減期は30年だぞ!」

と叫びたくなる。事故からはまだ8年。福島にはまだまだ放射性物質がばら撒かれたまま。そこで多くの人たちが生活している。(福島だけではない。報道されないが、その周辺の町も同じ。東京、埼玉に一部も汚染されている)報道されないことは、よほど興味を持って調べないと分からないが、報道されても「気の毒ね〜」で終わる人が多いのはなぜか?

なぜ、人の悲しみが体感できないのか? ひとつには経験値だ。学生時代、友人が貸した金をなかなか返さなかったことがある。1万円だったが、当時の僕には大金(今でもそうだが)だった。それを別の友人が聞いて

「せこい!1万円くらいでガタガタ言うな。心が狭いね〜」

と言われた。その後、その友人が貸した5千円が戻って来ないことがあったので、「5千円くらい!」と言ってやったら真剣に怒り、

「貸した金返すのは当たり前だろ!」

と言われた。友人は極端なところもあるが、他人の痛みは分からないが、自分の痛みは取り乱して怒る。それが人というものかもしれない。では、そんな人たちに、どうすれば他人の痛みを伝えられるのか? 感じてもらえるのか? 考えた。それが映画作家の仕事なのだ。悲しみを、苦しみを、感じてもらうことで、そこから問題解決を一緒に考えていける。それが分からないからこそ、

「気の毒ね〜」「寄り添いたいね」

と上から目線で、他人事として捉えてしまうのだ。「朝日のあたる家」を作るときに考えた。どうすれば福島の人たちの悲しみが伝わるか? 報道でいくら惨状を伝えても、「気の毒だね〜」としか思わない。いろいろ考えて、やはり「報道」というのは「情報」でしかないこと。それでは他人事で終わる。

対して映画は「体験」だ。恋愛映画では自分が主人公になり恋をする。アクション映画では自分がヒーローになり活躍する。その意味で原発事故もドキュメンタリーではなく、物語=劇映画にすべき!と思い「朝日のあたる家」を作った。まあ、これでもか!という位に友人知人、先輩から反対されたが、そのことは以前に書いたので省略。映画を見て多くの方から

「ようやく福島の人たちの思いが分かりました...」

と言われた。批難した方々から「自分たちの気持ち。伝えることができなかったので、嬉しかったです」と言ってもらえた。そして、今回は沖縄戦だ。沖縄戦だけに留まらず、基地問題、沖縄の問題は福島の原発事故と同じ構図だ。

オスプレイの事故が報道されると、テレビを見ている人は「沖縄の人たち気の毒ね〜」と思う。でも、本土にあった多くの基地を沖縄に押し付けていることを忘れている。原発と同じだ。自分たちのリスクを肩代わりしてもらって「気の毒」はないだろう。でも、やはり人は他人の悲しみを理解し辛い生き物。

そして今回はドラマではなく、ドキュメンタリーで沖縄戦の悲劇を伝えなければならない。「朝日」はドラマなので、何とか悲しみを伝えたが、ドキュメンタリーでどこまで「悲しみ」を表現し、他人事ではなく、自分のこととして感じてもらえるか? 教科書的なドキュメンタリーだと歴史は分かっても、痛みは伝わらない。学校の歴史の授業のような作品では意味がない。

この数年、それを考え続けて来た。悲しい事実を描いたからと、観る者が「悲しい」と感じる訳ではない。何より人は他人の悲しみや苦しみを理解するのが苦手な生き物なのだ。どうすれば、悲しみは伝わるか? どうすれば他人事ではなく、自分の苦しみとして考えてもらえるか? 今回の作品「沖縄戦」はまさにその戦いである。

沖縄戦ビジュアル3.jpg

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:地域

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。