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僕らは「戦争を知らない子供たち」ではない=戦争の悲しみを伝える物語を見て育った世代? [戦争について]

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僕らは「戦争を知らない子供たち」ではない=戦争の悲しみを伝える物語を見て育った世代?

今の時代。戦争を実感するのは難しい。当時の記憶が鮮明な人はすでに90代。80代だと幼すぎて記憶が曖昧なことが多い。話を聞く機会は少ない。活字で読んでもよく分からない。B29と書かれてもどんなものなのか?どのような形で、どのような時に使われるのか?想像できない。なので、戦争を知るには漫画とか戦争映画が有効だと思えた。

が、それでも僕の世代に取って、それらを見ても「あーこれってガンダムの元ネタね」とか「これはスターウォーズの発想だ」とか言う印象が強く、その時代をリアルに感じるのが難しい。つまり、戦時中と今の自分を結びつけるものが存在しないのだ。戦争をイメージすることはできる。でも、実感することができない。SF映画と同じレベルでしか考えられないのは、それが原因なだろう。

違う方法論でアプローチしてみた。僕ら(50代)が子供の頃は高度経済成長の時代。その頃に見たドラマやアニメ(昭和40年代)を作ったいた作家たちは、戦時中に子供時代を過ごした世代だ。代表的なのが「ウルトラ」シリーズの金城哲夫や上原正三。金城は沖縄で降り注ぐ艦砲射撃の中を逃げ回った経験があった。他に作家では朝鮮戦争、ベトナム戦争時代を生きた人たちがいる。彼らが作ったドラマは当然時代を反映。隣の国で、アジアで戦争が行われていた時代なので、その影響が作品に出ているはずだ。

思い出してみると、「ファーストガンダム」のランバラルの話。彼が戦死し、愛人のハモンが復讐の戦いに出る時に、兵士の1人1人と握手するシーンがある。20歳前に見たが、敵のキャラがこんなことするなんて、凄いなあと衝撃を受けた。「ガンダム」を知らない人は子供向きのロボットアニメと思っていることがあるが、そうではない。だからこそ、40年経った今でもシリーズが続いているのだ。その握手シーン。原点がある。松林宗恵監督の「太平洋の嵐」零戦隊が出撃する前に艦長がパイロット全員と握手する場面がある。それを見たとき「ガンダムの元ネタはこれか!」と思った。そして、それは創作ではなく、実際の話だった。

以前から聞いていたが「ガンダム」の監督の富野由悠季は戦争オタクで、その辺にめちゃめちゃ詳しい。ある時、作画スタッフが富野部屋に呼び出されてこう言われた。「海軍の敬礼を知っているか?やってみろ!」と、スタッフは敬礼をしたが、「違う!艦の中は狭いんだ。こうやるんだ!」と低めの敬礼をして見せたと言う。そうか、艦内は狭いので陸軍とは敬礼も違うのか〜と富野監督の知識に驚かされた。が、本当にそうなのか? そこで先の「太平洋の嵐」の監督で、本当に海軍将校として戦争に行った松林監督にお会いした時に、聞いてみた。ら、その通りだと言う。目の前で敬礼を見せてくれた。

「ガンダム」シリーズのリアリティは実際の戦争、軍隊をベースにすることで作り出されているのだろう。モビルスーツは戦闘機。真珠湾奇襲以降、戦艦ではなく空母が主流になるように、1年戦争でもモビルスーツが主力になっていく。また、ジオンはドイツ軍であり、日本軍だし、連邦軍もある意味では日本軍だ。そんな歴史と事実をもとに作られた世界観が見るものを引きつけるのだろう。そう考え、他の作家はどうだろう?と考えた。戦争に詳しくなくても、朝鮮戦争やベトナム戦争時代を生きた作家なら何か影響があるはずだ。

そこで見たのが「シルバー仮面」「スペクトルマン」。どちらもB面タイプの作品。「シルバー」は確か「ミラーマン」の裏番組。正統派の円谷プロではなく、そこから分かれて出た実相寺昭雄監督らのグループが作ったかなりマイナーなドラマ。「スペクトルマン」も当初は「宇宙猿人ゴリ」と言う敵キャラがタイトル(今でいうと「コブラ会」?)で、公害をテーマにしたヒーローもの。まさに昭和40年代だ。

面白いことに大島渚監督の「夏の妹」は沖縄が舞台。でも、戦争も基地もテーマでないように見える(が、実はと言う作品)その中で石橋正次が「シルバー仮面」の主題歌を歌う。彼は「アイアンキング」の主人公であり、なんで「シルバー仮面」と思ったが、「夏の妹」の脚本家が「シルバー」を書いていたのだ。それを思い出し「シルバー仮面」は沖縄関連?と見ていて感じたことがある。主題歌からして悲しい。

♪「シルバー仮面はーさすらう仮面。燃える正義の銀の色」「悲しい時には呼んでみる。兄よ、妹よ、弟よ。ご覧、緑の地平線。そうだ。僕らの故郷は地球〜」

なんか、この歌詞からも沖縄戦を感じる。そう、このドラマの主人公である光兄弟は両親としに別れて、宇宙人に追われながら旅する兄弟(男3人、女2人)の物語。だが、どこへ行っても嫌われ、周りの人が犠牲になる。沖縄戦ではなくても、戦場をさまよう住人の悲しみが底辺にあるのでは? 追ってくる宇宙人はアメリカ兵なのでは?と考えてしまう。

そんなドラマを見て僕らは育っている。だから、戦争の悲しは子供の頃に受け止めているはずだ。以前に解説した「ウルトラセブン」の最終回。今見ても涙が溢れるのは沖縄人・金城哲夫のやりきれない悲しみが反映されているから。そんな作品を見て、僕らは育って来た。戦争は遠い世界の話ではないはずだ。


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