ドキュメンタリーの構成はロックコンサートに近い? [編集作業]
ドキュメンタリーの構成はロックコンサートに近い?
劇映画の場合。編集はシナリオ通りに撮影した素材を繋いで行く。ドキュメンタリーも、企画時の構成表があるので、それに従い繋いで行くが、そうしない場合も多い。
というのは、劇映画の場合はクライマックスは決まっている。それを最初に繋ぐわけには行かない。ストーリーが解らなくなるから。でも、ドキュメンタリーの場合。どこがクライマックスになるか?は取材前には決まらないことが多い。実際に取材して、意外に期待はずれと言うこともあるし、ついでと思って取材したものがことのほか感動的だったりもある。
なので素材を確認してから、繋ぐ順番を決め直す。ここまではどの番組でもやるが、僕の場合はさらに繋いでみて、もう一度、順番を変える。これは理屈ではなく、乗りとか、センスとか、感じ方、リズムで、流れが順番にする。音楽で考えると分かりやすい。
例えばRストーンズのコンサート。1局目が「Start me up」と言うのは定番。でも、1995年ツアーは「Not fade away」から始まり、なんと「Satisfaction」が3曲目。いつもならアンコールかラストのナンバーだ。B・スプリングスティーンは1988年のUSAツアー「Tunnel of love 」エクスプレスツアーでは、前半のラストが「Born in the USA」で、アンコールが「アコースティクの「Born to run」だった。
ストーンズの定番。クライマックスは「Its only Rock nRoll」「Brawn Sugar」「J umping Jack Flash」だが、その順はやはり盛り上がる。その反対デモいいが、これ、これ、あれ、と言うのがヒートアップ。ドキュメンタリーも同じ。時間軸通りに繋ぐこともあるが、ノリも大切にせねばならない。
えーこの曲のあとにあの曲かあ〜と言う驚きも大事。昔、イーグルスがコンサートで1局目が「Hotel Carifornia」だったことがある。驚いたが、それ以上の曲がないので、あとはどうするの?と言う感じ。順番は大事だ。ドキュメンタリーも同じ。
ドキュメンタリー映画の大変さ。劇映画より苦労が多いこと。なかなか想像できない? [映画業界物語]
ドキュメンタリー映画の大変さ。劇映画より苦労が多いこと。なかなか想像できない?
劇映画も大変だが、ドキュメンタリーは別の意味で大変だ。というと友人にこう言われた。
「映画は俳優が出演するので、高いギャラを払わなければならないけど、ドキュメンタリーは俳優が出ないので安く済んでいいよね? 今回は楽だっただろ?」
素人目にはそう思えるのだろう。でも、それは違う。劇映画よりむしろドキュメンタリーの方が大変なのだ。
劇映画ではスケジュールを決めて、連絡しておけば、俳優はその日に必ず現場に来てくれる。遅刻したり、ましてドタキャンしたりはしない。それがプロなのだ。ところが、ドキュメンタリーの場合は一般の方にインタビューする。1ヶ月も前からアポを取り、何度も連絡しているのに、自宅を訪ねる日になって
「今日は急に都合悪くなったので、他の日にお願いします!」
と連絡が来ることがある。取材は1週間。他の日は他のインタビュー。時間はない。それでも相手の好意で取材させてもらうので、やりくりする。それはいい方で、「来週なら大丈夫です!」なんて当時に言ってくる。来週はもう帰京している。
こちらは東京から取材に行ってることご存知なのに、なぜかお友達感覚で「今日はちょっと〜」と言う人がいる。その人のスケジュールに合わせて、その週に取材を決め、他の方々にもその週で予定を取ってもらう。無理をお願いすることもある。なのに、一番メインの人がそんなことを言い出すことがある。
それが2人ドタキャンされたら、もう大変。その2人合わせで現地に来ているのに、その2人がダメなら何をしに行ったか?分からなくなる。飛行機代、スタッフのギャラ。機材。レンタカー代。宿泊費と、それらの費用が全て無駄になることもある。
最初の段階なら、インタビューがダメでも、風景撮りとか、その他の取材をすることができるが、最終段階でそれをされると致命的。下手すると100万くらいが飛んでしまう。また、取材をお願いしても
「先日、NHKでも取材を受けたので、その映像を借りてください!」
と言う方もいる。が、それは出来ない。NHKが取材したものはNHKが著作権を持つので、本人の同意があっても使用は出来ない。が、そんな業界の事情は一般の方には分からない。その辺の説明からしなくてはいけない。また、
「忙しいので、喫茶店でなら会えますよ」
と言われることもある。これもダメ。喫茶店でインタビューは出来ない。雑誌の取材ならいいが、撮影する場合は、音が問題。周りの客の話し声、店のBGM。撮影が出来ない。当日になって、
「やっぱりヤメた!話さない!」
と言う人もいる。或いは何度も何度もお訪ねして、お土産を持って行き、交渉を進めても、最終的に断られることもある。もちろん先方にも事情があるので、断られるのは仕方がない。でも、その交渉にかけた時間。費用。労力は全て無駄になる。
そんなことで取材経費がどんどんなくなる。取材ができて経費を使うならいいが、経費は使うが取材は出来ないと言うことが続くこともある。期待して取材したけど、期待はずれのお話しか聞けないこともある。そんなことで経費がなくなり、仕上げ段階で予算が苦しくなる。
安いスタジオを探し、新人でギャラの安い効果さんを探し、音楽やナレーションも上手くないけど、安い人にお願いせねばならない。いくらいい取材ができていても、それではそれなりの作品になってしまう。が、誰も恨むことは出来ない。
取材を拒否した人が悪いか?
と言うと、その人なりの事情がある。ドタキャンした人は悪いが、そのために50万〜100万と言う経費が無駄になるとは想像しない。製作会社もだからと言って追加予算は絶対に出さない。ドタキャンだけでなく、台風や事故で現地に行ったが、撮影できなかった....と言うこともある。
でも、それがドキュメンタリーなのだ。その意味で今回はリサーチ&連絡係をした担当者が本当によくやってくれた。ドタキャンや取材拒否もあったが、いろんな人を探し出してくれた。もし、プロのリサーチャーを雇っていれば、それでまたかなりの人件費が必要だった。カメラマンやスタッフも本当に頑張ってくれた。某NHKが同じレベルの作品を作れば、今回の3倍の費用がかかったはず。本当にドキュメンタリー映画はつらい!
沖縄戦ドキュメンタリー編集報告 なかなかいい出来になりそう?! [編集作業]
沖縄戦ドキュメンタリー編集報告 なかなかいい出来になりそう?!
編集は本当に時間がかかる。毎日、1歩しか進めないのに富士山に登るようなものだ。でも、昨年のXマス前から作業開始。2ヶ月弱。タイムラインを見ると、映像が切り出されて並んでいる。インタビューパートはあと2人。全部で7人だったので、折り返し地点は超えている。
仮の音楽をつけるとなかなかいい。編集は毎回、どんな風になるか?自分でも分からないもの。作るというより、育てるという感じ。子育てと同じだ。真面目な会社員になってほしいと育てても、ヤクザや不良になることがあるように、親の思い通りには行かない。
しかし、懸命に毎日、作業をし、全力でかかれば、作品もそれに応えてくれる。今回もかなりいい出来になりそうだ。映画は編集が命というが、ドキュメンタリーは特にそうだ。同じ素材でも編集する人によって全然違うものになってしまう。
それを自分らしく、そして観客に分かりやすく、退屈せず、それでいて沖縄戦が伝えなければならない。それが今回も行けそうな予感。ただ、いつものように長めに編集してある。現在、3時間ほど。これを半分ほどにしたい。そうすると密度は濃くなるが、カットせねばならないエピソードも出てくる。そこが難しい。
また、短くする作業も1週間以上かかる。なんとか2月中に編集を終えて、3月は仕上げに入りたい。
沖縄戦。知れば知るほど今の日本と同じ状態? [沖縄の現実]
映画の宣伝は9億円かけて10億儲けるのが王道。なのにわずかな予算であれこれ高望みする監督? [映画業界物語]
映画の宣伝は9億円かけて10億儲けるのが王道。なのにわずかな予算であれこれ高望みする監督?
映画ファンの友人と話をしていて、映画の宣伝費は東京だけで最低の最低で500万はかかると話すと驚かれた。映画ファンでも驚くのだから一般の人はもっと分からないことだろう。テレビで当たり前のように流れているCM。ある期間流してもらうだけで、数千万から数億円かかること。意外に知られていない。
テレビだけではない新聞広告でも、全面広告だと*千万円。小さなものでも数百万する。でも、あまりにも当たり前に広告は出ているので「いくらするか?」なんて考えたこともない人が多いはず。映画を宣伝するにも当然、かなりの費用が必要だ。トムクルーズ主演のあのスパイ映画。9億円の宣伝費。
テレビ、新聞、雑誌、看板、と、公開前にはどこへ行っても宣伝を見かけた。その額9億円。それくらいしないと、多くの人に映画の存在を知ってもらうことはできない。そうやって大ヒットさせて収入は10億円。儲けは1億。少ないように思えるが1億円の収入は凄いこと。でも、その1億を稼ぐために9億掛ける。
映画の宣伝費。最低の最低は都内公開だけで500万ほど。もっと安いのもあるが、それだと最初から投げているのと同じ。やる気がないとしか言えない。500万でもほとんど何もできない。具体的に紹介しよう。チラシ、ポスター、前売り券の印刷。その前にデザイナーを雇いデザインをしてもらう。パンフレットもデザイナーに頼む。記事やインタビューも必要なのでライターさんを雇う。
まず、それらの印刷経費と人件費。次にマスコミ試写会。テレビ、ラジオ、雑誌等、100社を超える会社に試写状を出す。住所書き、発送、連絡には人員が必要。その他にもいろんな仕事があるので、人を雇う。その人件費。そして試写会。最低でも10回。それなりの作品は20回以上やる。会場もピンキリだが、高いところは1回10万以上。20回やれば200万!
完成披露試写会。俳優を呼ぶ。衣裳、メイク、等のスタッフが必要。衣裳のレンタルも大事。全部、費用がかかる。俳優さんはお気に入りのメイクさんがいる。売れっ子なら1日5万円。俳優の数だけメイクさんが必要。あと、メイクをする場所。待機する場所もいる。劇場にあればいいが、シネコンにはその用意がないところもある。近くのホテルに部屋を取る。
1部屋2万? 広めの会議室なら数万? 昼を挟めば弁当も必要。そして公開初日にまた舞台挨拶。同じだけの費用がかかる。ここでもう500万は完全に超えている。全国公開ではない都内だけの費用だ。
以上のプラン?はもちろんテレビ、雑誌、ラジオの広告はなし!という価格。これで映画の存在をアピールするのはかなり厳しい。だからこそ、大手企業は莫大な費用を使ってCMを打ち、新製品を売ろうとするのだ。映画も同じ。大手は億単位で宣伝。だから、大した作品でなくてもヒットする。ネットという手もあるが、やはりテレビ、新聞に比べると拡散力が極めて小さい。
そんな中、今回の「明日にかける橋」の宣伝会社はかなり厳しい予算の中で、本当によくやってくれた。血を見る努力をしなければ、あの予算であそこまでは出来なかったこと。宣伝を知っている人には分かる。
だのに監督にはそれが分からない人がいる。撮影では張り切るが、宣伝には無頓着。それでは努力して作った作品をドブに捨てるようなもの。観客に見てもらってこそ映画!なのに監督には最低額の宣伝費しかないのを知りながら
「100館くらいで上映するんだよね?」「五大都市で舞台挨拶かな」「テレビスポットとか当然やらないとね〜!」
できるわけ無いだろう! 言い換えれば
「3万円も出せば渋谷でマンション住まいできるよね? 2DKくらいがいいなあ」
というようなもの。もう少し勉強してほしい。宣伝費が1000万あっても大したことはできない。宣伝は本当に金がかかる。なのに多くの監督は自ら宣伝活動をしない。でも、これからの時代。それでは済まない。宣伝は大事。まず、宣伝はいくらで何ができるか?知ることからスタート。