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映画の題材を勉強せずに、撮影してしてしまう監督たち? [映画業界物語]

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映画の題材を勉強せずに、撮影してしてしまう監督たち?


「議員さん。選挙で落ちればタダの人」という言い方をするが、「映画監督、映画撮れなきゃ、プー太郎」と言われそうな気もする。議員なら元の仕事に戻るとか、他にも仕事ができそうだが、映画監督なんて映画作る以外に何もできない。そのくせ、いざ映画を監督する日のための準備もせねばならない。その日まで別の仕事をして待とう!ではダメだ。

大工さんなら仕事がなくて休んでいても、依頼が来ればまた大工道具を持って仕事に行けばいい。職人さんなら皆、それで大丈夫。でも、監督業は作る作品の題材を徹底して勉強せねばならない。まあ、全く戦争の取材をせずに、戦争を背景とした映画を作る監督もいるけど、そういうのって本当に許せないし、観客を感動させる作品にはならない。

だが、その題材を勉強するのは本当に大変。時間もお金もかかる。監督には依頼を受けてから1週間くらいで、ちょこちょこと題材と同じ漫画を読んで、「はい。勉強しました〜」という人もいるが、そんなで映画撮ってしまうなんてあり得ない。僕が「青い青い空」を監督する前には書道を4年勉強した。「朝日のあたる家」では原発の取材を3年した。「ドキュメンタリー沖縄戦」では戦争。これは3年したが、今も続けている。各分野ともに、何年勉強しても十分ということはない。

特に戦争は沖縄戦が題材でも、それだけではなく太平洋戦争。ヨーロッパ戦線。ナチスドイツ。大本営。戦後の日本も勉強せねば見えて来ない。関係者に話を聞き、専門家の教えを乞い、本や資料を読み漁る。監督がその分野を徹底して把握してこそ、映画として形にできるのだ。だから、「青い青い空」の後は書家の先生方の会で1時間の講演、「朝日の」後は原発についての講演会に呼ばれた。

少なくても、その分野について講演会ができるくらいの知識と情報を持たなければ、それを題材に映画を作る資格は得られないと考える。その辺を実践する監督が最近は少なく、聞きかじっただけの知識で全く取材もせずに「記者」ものを作ったり、戦争の話を避けて戦争体験者の物語を作っている若手がいる。だったら、別の題材でやれ!と言いたくなる。

ただ、そこまで調べて勉強しても、映画が中止になることがある。そこまでかかった費用も時間も全て無駄になる。多くの監督はそれを恐れて、できる限り労力を使わずに済ませようとするのだ。依頼がなくても「いつか、その題材で撮るぞ!」と思っていても、製作費が集まらず、形にならないことも多い。生活に追われて、資料を買い、取材をする経費も出ないので、依頼が来てから本格的に勉強しようと思い、年月が過ぎて行く。

それでは例え依頼が来ても、そこから勉強したのでは間に合わない。結果、不十分な知識で監督することになる。だから、僕は依頼がなくても自分が興味があれば調べる。原発についても、そもそもは映画を作るために勉強した訳ではない。

テレビがしっかりと伝えない事故の真相を知りたくて取材を始めた。結果、映画にしたが、その間の取材費等は製作費が超低予算だったので、もらっていない。「青い青い空」の書道の資料代は、製作会社が理不尽にも支払いを拒否。そんな目に遭うこともあるのも、監督たちが題材の勉強をできる限りしないで済ませる一因。

だが、それでは作品が軽くなる。力がなくなる。説得力を持たない。感動を呼びおこせない。事実と知識の積み重ねばリアリティを産み、観客の心を揺さぶる。そのために題材を勉強し、把握することこそが映画監督の仕事だと思う。ま、いろいろ大変なのだけどね。



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