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小説「官邸ポリス」お勧めできないが、フェイクの背景を一応、推理しておく? [読書]

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小説「官邸ポリス」お勧めできないが、フェイクの背景を一応、推理しておく?

安倍政権を影で支える官邸ポリスの暗躍ぶりを描き、物語の97%が事実であるという売りで話題になった本。登場人物の名前も多部敬三ー総理。多部恵子総理夫人。館 咲子ー夫人秘書。今野雅也ー総理政務秘書官。山本 巧ー東日本テレビNY支局長。野村 覚ー警視庁刑事部長と誰もがすぐ誰のことか?分かる名前で登場する。

読んでみたが驚くべき事実は描かれていない。ほとんどあらすじのような話。多くがすでに言われていること。元警察官僚が書いたということで、確かに庁舎や部署の表現。尾行や情報収集の描写はリアルだ。

が、肝心の事件(伊藤詩織さん事件。前川事務次官事件等をモデルにしたもの)に著者は実際に関わった訳ではないと感じる。近い部署にいたのであれこれ聞いた話とマスコミが流した話で推理して書いた。だから、あらすじのような物語になった。実際に関わっていないし、著者はプロの作家ではないので表現力もないので、その場にいたようには書けなかった。

また、物語に政権批判は出てこない。劇中の多部敬三総理が黒幕という話もない。むしろ彼は何ら汚い手を使っておらず、官邸ポリスが忖度して邪魔者を排除したという展開。それどころか物語の中で総理は国民に評価されているという話まで出て来る。前川さんの事件は疑惑がかけられたというところで終わり、「真剣に風俗通いをしていたのではない」という描写はないので、事件を知らない人は誤解するだろう。

つまり、総理側近から指示された官邸ポリスが悪辣な手で都合の悪い人を落し入れるという話というより、愛国心があるポリスたちが総理を守るために活躍。それこそが国を守ることである。その現実を皮肉るとか、いうものではない。歪んだ物語なのだ。東京新聞の望月衣そ子さんが名前も顔も未公表の著者にインタビューした時も、まさにそこがテーマだったと告げたらしい。物語からも「政権は許せない。やり方が汚い!」という憤りは感じられない。

言われていた官邸の裏部隊である官邸ポリスの暗躍振りを暴露する物語ではなかった。あれ? 似たような記事を書いたのを思い出す。あの映画だ。あれも宣伝されていたように官邸の暗部に斬り込む危険なドラマではなく、昭和に流行った「事件記者」ものを焼き直しただけで、何ら現代の政権とは関係のないフィクション。それをいかにもセンセーショナルな映画であるような宣伝をしヒットさせた。

この「官邸ポリス」もほぼ同じ構図だ。想像するに、作家は本当に警察官僚。彼に出版社がアプローチ。「政権を支える影の組織を描いた小説を書きませんか? なるべく誰がモデルか分かる形で!」匿名で構いません。しかし、彼は話題の事件には関わっていない。ただ、誰がどんな指示をして、どのように工作が行われたか?は想像が付く。プロの作家ではないので、あらすじのような小説になった。何より彼に政権批判の気持ちはない。

それを出版社が事件の裏を知る元官僚がその事実を暴露した小説であるかのような宣伝。「原発ホワイトアウト」のようなスタイルであると勘違いさせるアピールをする。多くの人がそれに誘導されて本を買い、ヒットした。あの映画と同じ構図。

そこから言えるのは「あの政権なら汚い手を使っているに違いない」という人々の憤慨があるということ。「真実を知りたい」「闇を切り裂いて欲しい」という思いを利用して中身のない小説を出版、見事に引っかかったということではないか? 「フェイクに騙されるな!」といつも書く僕も、しっかり買って読んでしまった。

ちなみに先の映画。望月さんの著書を「原案」としてクレジットしているが、多分、こちらの小説をモデルにしている。メインキャラ二人が酷似。そして中身がないのに「これは凄い」と思わせる手法も同じ。読まない方がいいと言いたいところだが、こうして誘導されるという勉強にもなるので、興味と、暇と、お金のある方ならぜひ。

参考=>https://cinemacinema.blog.so-net.ne.jp/2019-08-16-2

ポリス=>https://okinawa2017.blog.so-net.ne.jp/2019-09-03-2



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