SSブログ

あの時の俳優の卵。無名だがプロの役者としてまだ頑張っていることを知る [映画業界物語]

IMG_5647.jpg


あの時の俳優の卵。無名だがプロの役者としてまだ頑張っていることを知る

もう15年ほど前になるが、俳優の卵たちを応援すべく毎月、無料のワークショップをしていたことがある。飯を食わせたり、芝居に連れて行ったりもしたが、そのことで甘えが生まれた。

いつしか監督ではなく、理解ある兄ちゃん。応援してくれるオジさんになっていた。監督依頼が来ると「私たち、俺たちも当然出してもらえる!」という気分になっていた。ただ、僕は自分の飯代を削っても卵たちに食わせたりしたが、作品は妥協しない。「頑張っているから役をやろう」「現場で勉強させよう」ということはしない。

僕は彼らの教師でも、マネージャーでも、指導員でもない。素晴らしい作品を作ることが仕事。キャラの合わない。実力の伴わない俳優は起用しない。卵たちだけでなく、P(プロデュサー)が権力を使い「この子。お願いしますね」とねじ込んで来る俳優がいても、絶対に受け入れない。自身が認める者以外は承認しない。

本来はそこで忖度すれば次の仕事に繋がるのに、そのせいで一度仕事をしたPは「何様だ!あの監督。融通が効かないなあ」と嫌われて二度と依頼をくれなかった。でも、大手プロダクションの新人を作品に入れることでPたちは金をもらったり、恩を売ったりしている。それには加担できない。大切なのは素晴らしい作品を作ること。

だから、可愛がっていた卵たちにも容赦がない。そのことで「失望した」「裏切られた」「認めてもらえない」と去って行く若手もいた。そんなことがあって、若手応援をやめ、俳優とは甘えが生まれないように、距離を置くことにした。以降の監督作も全て僕自身が「この俳優しかいない!」というキャスティングをした。義理人情では選んでいない。

ただ、時々、あの時の卵たちがどうしているのか?考えることがある。ほとんどが夢破れ、もう東京にはいないようだ。あるいは堅気の仕事をしているのかもしれない。ところが、ある映画学校の実習発表のHPを偶然見たときに、あの時の一人が出演しているのを見つけた! 昔の実習は俳優科の生徒が出演することが多かったが、最近ではプロ経験がある俳優がボランティアで出ることがある。

彼は無名だが、アルバイトをしながら俳優業を続けているようだった。映画に1ー2本。小さな役で出演したようだ。そろそろ40に近いと思うが、今も頑張っていることを知り嬉しい。ただ、学生の実習に出るということは、今も大して仕事がないということ。それでもカメラの前に立ち、芝居をするのは勉強になる。例え学生映画でも。やる気を感じる。

会って飯でも奢ってやりたい!と思えたが、それはダメだ。また甘えが生まれる。「監督は俺を覚えていてくれた。次回作で出してくれるかも?」と期待するだろう。もちろん、ふさわしい役があればいいが、昔なじみということでは出さない。何より未だに売れていないということは、実力も伸びていないということ。

それでも頑張っている奴がいることは嬉しかった。遠くから応援したい。いつか「あー、この役はあいつしかない!」ということがあれば連絡しよう。彼はもうプロだ。その日を楽しみに実習作品紹介のHPを見ながら1人乾杯した。



70068181_2967410579999893_1642123626855530496_n.jpg
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。